優秀な人のただ1つの欠点はなんだと思いますか?」
売上高5兆円の世界的IT企業の役員が投げかけたこの問いに、あなたならどう答えるでしょうか。敬愛する妹尾輝男氏の最新刊『世界の役員が教えてくれたこと』(ダイヤモンド社)の帯に書かれた言葉です。デビュー作『世界は悪ガキを求めている』(東洋経済新報社)、2作目『成長の書』(講談社)に続く3冊目で、すべて私がエージェントをしています。はじめてお会いした時から波長が合い、この方の言葉は人の心に届くと感じていました。
妹尾氏は世界最大のヘッドハンティング会社コーン・フェリーの日本法人で代表を務めた人です。仕事は年収5千万円クラスの社長や役員を探し出すこと。年商数百億円規模の会社を率いる人材ですから、自然とそういう水準になります。30年以上にわたり世界のトップと向き合ってきた人の人材論は、ほかでは読めないものです。本書はその妹尾氏が2000人以上のエグゼクティブから学んだことを一冊にまとめました。
役員と呼ばれる人たちは物の見方が違います。仕事だけでなく人付き合いや日常の振る舞い、意思決定、休日の過ごし方まで違う。本書には休日にわざわざネットで「全然当たらない」と評判の占い師を訪ねる役員が登場します。一見すると理解できない行動ですが、その裏にはその人だけの視点があります。そして思いついたらすぐ動く。こうしたエピソードを読むうちに、自分がいかに当たり前に縛られていたかに気づかされます。冒頭の問いの答えもぜひ本書で確かめてください。私は読みながら何度もドキッとしました。
この本は役員を目指す人だけのものではありません。副題は「『仕事に追われる人生』で終わらない生き方」です。毎日の仕事に追われ、気づけば一年が過ぎている。このままでいいのかと思いながら、立ち止まる余裕もない。そんな人にこそ手に取ってほしいのです。世界のトップが何を見て何を考えているのかを知るだけで、明日の景色が変わります。
妹尾氏の本は一作目から変わらないメッセージを伝えています。日本の会社で評価される優等生である必要はない。自分の頭で考え、自分の足で動けばいい。その言葉に背中を押された読者を私は何人も見てきました。今回はそれを世界のトップたちの生きた実例で見せてくれます。前の2冊を読んだ方にも初めての方にも、自信を持っておすすめできる一冊です。
発売は10月29日です。この本が誰かの人生を変えるきっかけになれば、エージェントとしてこれほど嬉しいことはありません。
日経新聞夕刊の取材を受けた。
インタビューはこれで4回目。最初は1回で終わるものと思っていたら「その話ももう少し詳しく」と続きが決まり、気づけば4回。どうも私の面白い話を気に入ってもらえたらしい。ありがたい話です。
写真はその撮影風景。本棚に囲まれた部屋に大きな傘のようなライトを立てての撮影。インタビューならしゃべっていればいいけれど、撮影となると勝手が違う。どこを見ればいいのか、手はどうしておけばいいのか。ただ立っているだけなのに妙に緊張する。カメラマンさんが身を乗り出して何枚も撮ってくれる横で、こちらはなるべく自然な顔をしようと必死。うまく写っているかは掲載されてからのお楽しみ。
ちなみに私の後ろにはピノキオの人形。写真に写り込んでいたら、私の話まで嘘だと思われないかとちょっと心配。でもどれも本当にあった話ばかり。
取材を受けるたびに思うのは、自分の話が人の手を通して文章になると、まるで別物に見えるということ。自分では当たり前だと思っていたことに記者さんが食いついてくれて、え、そこが面白いの?と驚かされることもしばしば。4回分ともなると話した量もかなりのもの。あれをどうまとめてもらえるのか、一番楽しみにしているのはたぶん私自身。
とはいえ、これだけしゃべるとどこが使われてどこが削られるのかも気になるところ。一番の自信作の話が載らないかもしれないし、自分でも忘れていたような一言が見出しになるかもしれない。そこはプロにお任せするしかない。面白い記事になっていればいいけれど。
掲載日が決まったらまたここでお知らせします。夕刊を手に取る機会があれば、ぜひ読んでみてください。感想も大歓迎。面白かったところも、そうでもなかったところも遠慮なくどうぞ。
記者さん、カメラマンさん、ありがとうございました。
掲載は十一月初旬日本経済新聞夕刊。乞う、ご期待。
取材していただきありがとうございました。
アップルシード・エージェンシー、設立25周年記念パーティーに約160人参集 - 新文化オンライン shinbunka.co.jp/archives/145…
#アップルシード・エージェンシー
#鬼塚忠
#新文化
弊社の看板作家、井原忠政さん(写真左)が第15回日本歴史時代作家協会賞「シリーズ賞」を受賞。10月16日に授賞式が開かれた。
受賞対象は双葉文庫「三河雑兵心得」、小学館文庫「北近江合戦心得」、文春文庫「真田武士心得」の3シリーズ。徳川、豊臣、真田とそれぞれ違う立場から同じ戦国の時代を描いた作品群がまとめて評価された。出版社も主人公も違う3つのシリーズでの合同受賞。井原さんが積み上げてきた作品世界そのものが認められたということだと思う。
歴史小説、時代小説は毎年数えきれないほど刊行されている。その中から選ばれることがどれほど大変なことか。しかもシリーズものは1冊勝負とは違い、巻を重ねても読者を飽きさせない力が問われる。各シリーズ年2冊を基本とするペースで書き続け、「三河雑兵心得」は累計165万部超、「北近江合戦心得」は累計30万部超。2025年に「真田武士心得」が加わり、三部作の累計は210万部を超えた。
2025年には3シリーズの第1巻を対象に、双葉社、小学館、文藝春秋の3社合同フェアも実施。719店舗から計8,900部の申し込みがあった。出版社の垣根を越えて書店さんに「井原戦国三部作」として並べてもらえたのは、それだけ作品に力があるからこそ。
井原作品の魅力は、天下を取った武将ではなくその足元で戦った人たちの目線にある。「三河雑兵心得」の主人公は百姓から徳川の足軽になった植田茂兵衛。名もなき一兵卒の目を通すと、知っているはずの戦国の出来事がまるで違って見えてくる。
井原さんはもともと経塚丸雄の名義で活躍してきた脚本家。2000年に城戸賞に入選してデビューし、2016年に小説家デビュー。2020年に井原忠政名義で「三河雑兵心得」の刊行を始めた。作家としてブレイクするまでには約20年かかったという。その歩みを思うと、金屏風の前で表彰状と花束を手にした姿にこちらまで胸が熱くなる。
受賞の知らせのあと、井原さんはブログで「井原ワールドそれ自体」を評価してもらったと受け止め、一人でニヤニヤしていると書いていた。いかにも井原さんらしい。
弊社では栂井が井原さんを担当している。これからも井原ワールドを読者のみなさんに届けていきたい。読んできた方も、まだ手に取ったことのない方も、この機会にぜひ三部作をのぞいてみてほしい。どのシリーズから入っても面白いはず。
井原さん、本当におめでとうございます。
房総半島の山の中で金色の蛇に出会いました。
落ち葉の散ったアスファルトの上に、黄金色の体をくねらせて横たわっていました。細かい模様が全身に入っていて、光が当たると金色に見えます。蛇の種類には詳しくないので名前はわかりませんが、思わず足を止めて写真を撮りました。
金の蛇は縁起がいいと言われています。なぜなら蛇は昔から弁財天の使いとされてきたからです。弁財天はもともとインドの川の女神で、日本では芸能や学問の神として、さらに「弁才天」が「弁財天」と書かれるようになったこともあって財運の神として信仰されてきました。その弁財天のそばにいる蛇は神の使いとして大切に扱われ、蛇を見ると金運が上がると言われるようになりました。白い蛇は特に神聖なものとされ、山口県岩国市のシロヘビは国の天然記念物にもなっています。
そこに金色が重なります。金色は文字どおりお金や黄金を連想させる色なので、金色の蛇は金運の象徴として白蛇と並んで縁起がいいと言われています。
蛇が脱皮をすることも関係しています。古い皮を脱ぎ捨てて新しい体になる姿から、蛇は再生や生まれ変わりのしるしとされてきました。蛇の抜け殻を財布に入れておくとお金が貯まるという話を聞いたことがある人もいると思います。
ほかにも十二支の巳(み)にちなんだ「巳の日」は弁財天の縁日とされ、財布を新しくしたり宝くじを買ったりするのにいい日と言われています。60日に一度めぐってくる「己巳(つちのとみ)の日」はさらに縁起がいいとされています。
蛇が苦手な人も多いと思います。私も子どもの頃は見るだけで身構えていました。それでもこうして由来を調べてみると、昔の人が蛇を恐れながらも敬ってきたことがわかります。田畑を荒らすネズミを食べてくれる蛇は、農家にとってありがたい存在でもありました。
山の中でたまたま目にした一匹の蛇ですが、何かいいことの前ぶれだと思うことにします。今年も残り3か月を切りました。いい知らせがあったらここで報告します。
蛇の写真が苦手な方がいたらごめんなさい。
弊社でエージェントをした9月の出版物です。
今月もビジネス書からノンフィクション、心が解きほぐされるストーリーから手に汗握る警察ミステリーまで、多彩で魅力あふれる8作品が誕生いたしました! 【9月の新刊ラインナップ(順不同)】
◆『ドリフターズと全員集合から学んだ流儀』園田 憲
伝説的番組の熱い現場から生み出された、生き方とビジネスの至高の流儀。
◆『潜伏 入国警備官・霧原隆一』越尾 圭
社会の裏側に迫る!なりすまし・潜伏のリアルを描いた緊迫の警察サスペンス。
◆『理想の家はどこにある』東山 泰子
風変わりな建築士が「住まい」と「人生」の悩みを華麗に解決する注目作。
◆『猫を処方いたします。(6)』石田 祥
世界累計100万部突破の大人気シリーズ最新刊!愛おしい猫たちが贈る心の処方箋。
◆『和菓子処 すみれ堂 しあわせの最中と百年の約束』奥野 じゅん
やさしい甘さと情緒あふれるストーリーにほっこり癒やされる和菓子ドラマ。
◆『はちみつ荘のとろけるレシピ』柊 サナカ
心とお腹を満たす極上のレシピと、あたたかな人間模様を描いた癒やしの物語。
◆『あなたの仕事は、ひそかに減点されている』江村 出
「真面目に頑張っているのに評価されない」悩みを根本から解消する必読の書。
◆『慟哭の刑務官』原 浩一郎
矯正施設の知られざる現実と葛藤を重厚に描き出す、魂を揺さぶる一冊。 どの作品も著者様のこだわりと熱量が詰まった自信作ばかりです。
「読書の秋」の始まりに、ぜひ全国の書店やオンラインショップでお手に取ってみてください! いつも応援してくださる読者の皆様、そして刊行に尽力してくださった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
【弊社主催イベントのお知らせ】〈心霊探偵八雲〉神永学さん×〈天久鷹央〉知念実希人さん トークイベント開催!
心霊探偵八雲シリーズが今年で22周年を迎えます。これを記念して、弊社の企画・運営でトークイベントを開催することになりました。ゲストは八雲の生みの親である神永学さんと、天久鷹央シリーズの知念実希人さん。人気シリーズを書き続けてきたお二人が、同じ舞台に並びます。
死者の魂が見える赤い左目を持つ斉藤八雲。病院を舞台に医学の知識で不可解な事件を解き明かす天久鷹央。どちらも一度読んだら忘れられない主人公です。ひねくれていて人付き合いが苦手なのに、なぜか目が離せない。そんな二人の探偵がどうやって生まれたのか、作者自身が登場人物にどんな思いを抱いているのか。今回のトークでは、ふだん作品からは見えない創作の舞台裏をたっぷり語っていただきます。
神永さんは22年にわたって八雲と向き合ってきました。知念さんは現役の医師として働きながら鷹央の物語を書いてきました。書き手としての歩みも作品の色も違うお二人だからこそ、話はきっと思わぬ方向へ広がっていくはずです。長年のファンの方はもちろん、どちらか一方のシリーズしか読んでいないという方にも、もう一方の作品を手に取るきっかけになればうれしいです。
そして参加者全員に、このイベントのために用意した八雲のオリジナルショートストーリーをプレゼントします。ここでしか手に入らない一編です。トークのあとにはサイン会とチェキ会も行います。お二人に直接感想を伝えられる機会はなかなかありません。好きな巻を持って、ぜひ会場まで足を運んでください。チェキ撮影をご希望の方はチェキ撮影券付きのチケットをお選びください。
📅日時 10月24日(土)14時
📍会場 出版クラブホール4F(神保町)
🎫参加費 3,500円/チェキ撮影券付き4,500円
✍️サイン会・チェキ会あり
🎁参加者全員に八雲オリジナルショートストーリーをプレゼント
詳細・お申込みはこちらから👇
peatix.com/event/5198386
パキスタン西部を旅した時の一枚です。砂漠での移動はラクダに限ります。車も歩きもきつい砂地をこの背中に揺られて進むのが、あの土地では一番理にかなったやり方でした。
乗せてもらったのは写真の一頭です。首元には毛糸のぼんぼんのような飾りがいくつも付いていて、持ち主に大事にされているのが伝わってきます。背中には麻袋で作った鞍が載っていて、その下には花柄のキルトが何枚も重ねてありました。土色ばかりの景色の中でそこだけ色があって、今見返してもつい目がいきます。乗り心地のためなのか持ち主の好みなのかは聞きそびれましたが、こういう手作りの道具を見るのが旅の楽しみのひとつです。
ラクダの背に上がってまず思ったのは高いということでした。写真で見ても地面がずいぶん遠く感じます。乗る時はラクダが脚を折って座ってくれるのですが、立ち上がる時に前後に大きく傾くので、しがみついていないと振り落とされそうになります。乗ってしまえば視界が開けて、土壁の家並みや遠くの電柱まで見渡せました。
自分の格好を見ると、セーターにゆったりしたズボン、足元はビーチサンダルです。よくこれで砂漠に出かけたものだと思いますが、当時はこれで十分だと思っていたのでしょう。日差しのきつい土地というイメージがありますが、この日は雲が多く少し肌寒かったのを覚えています。
背景に写っている家は土を固めて造ったもので、壁も道も同じ色をしています。木箱を積み上げた小屋のようなものもあり、人の暮らしがすぐそばにある場所でした。奥を歩いている男性はゆったりした民族衣装を着ていて、この写真の中で私だけが少し浮いています。
飛行機や車でどこへでも行ける時代ですが、動物の背に乗って移動するとその土地の時間の流れ方が体に入ってくる気がします。急がず、ラクダの歩く速さに合わせるしかない。それがかえって心地よかったのだと思います。
古い写真を見返していたら、また行きたくなりました。いつかもう一度、あの背中から景色を眺めてみたいです。
読書家の方に「夢中になって読んだ」と言われ、それだけで書いた甲斐があったと感じます。
xitter.cf/helmikuu84/status/2104…
拙著『会社は大きくするな!』(講談社)を読んだ若い読者の方から、面白い質問をいただいたのでお答えします。
質問「大学3年生です。将来は会社を起こしたいのですが、就職活動でどう動けばいいか迷っています。アドバイスをください」
若いうちから何かをしたいと思うのは、とてもいいことだと思う。就職活動は「仕事をする会社を探す」という感覚ではなく、「お金をもらって参加する研修を探す」と考えるのがいい。大学を出ていきなり起業するのはハードルが高い。5年ほど働いて社会がどう動き、会社がどうやって回っている、そして何が自分の武器になるのかがわかってから起業しても、決して遅くはない。
こうした話も本に書いています。よろしければぜひお読みください。
gendai.media/articles/-/1714…
オフィス近くのスーパーが、全て無人レジに変わった。
驚きました。今まで働いていた、私が挨拶をしていた人たちが、全て消えていた。もう挨拶をしてくれる人はいない。ただ、スーパーからすれば当然です。かなりの人件費を削減できたのだから。
私はレジの前に立ち、自分で商品のバーコードをかざし、自分で袋に詰め、自分で決済を済ませた。二百一円。お釣りはゼロ。画面には「おわり」の文字だけが表示されている。誰とも口をききませんでした。
あの店には、何人か顔なじみがいました。名前は知らない。ただ、いつも同じレジに立っていた年配の女性がいて、目が合うと会釈をしてくれた。それだけの関係です。それだけの関係でしたが、なくなってみると、思ったより寂しい。
あの人たちはどこへ行ったのか。別の店舗に移ったのか、辞めたのか。私には知るすべがありません。
弊社でも、AIの導入を現在進めています。
校正、企画書の壁打ち、翻訳、契約書の確認。これまで人の手でやっていた作業が、次々に置き換わっています。速い。正確です。その分、社員が原稿を読む時間が増えました。ただ、進め方には気をつけているつもりです。
AIを入れて人を減らす、という順番にはしない。人がやらなくてよくなった時間を、別の仕事に振り向ける。そう決めています。効率化で浮いた分を利益に変えるのではなく、社員がより創造的な仕事をする時間に変える。
きれいごとに聞こえるかもしれません。ただ、弊社は十人ほどの会社です。一人抜けたら、誰が抜けたかが全員に分かる。数字の上の削減ではなく、顔のある人間が消えることになる。それはやりたくない。
スーパーの選択が間違っているとは言いません。あの規模で、あの利益率で、経営の合理を追えば、そうなるのでしょう。私が経営者だったとして、同じ判断をしないと言い切れるか。自信はありません。
ただ、小さい会社には小さい会社の選択肢があります。人を切らずに、技術を入れる。効率を上げた分を、人を減らすためではなく、人が面白い仕事をするために使う。
鬼塚忠(作家のエージェント会社「アップルシード・エージェンシー」代表・作家) retweeted
書籍情報はこちら
AIで終わる人 AIで化ける人 diamond.co.jp/book/978447812…
歩いていたら、蟹が足元を歩いていた。
海辺ではありません。木立の下の、落ち葉が積もった道です。枯れ葉と青い葉が重なり、その上を赤い鋏を掲げた蟹が横切っていく。
立ち止まって見ていました。
アカテガニだと思います。名前のとおり、鋏が赤い。甲羅は灰色がかった茶で、落ち葉に紛れると見分けがつかない。ところが鋏だけが、熟れた果実のように赤い。この配色は何のためなのか。
蟹は私に気づいて、一度動きを止めました。そして鋏を少し持ち上げる。威嚇です。体長は五センチほど。人間の靴の先ほどしかない相手に、正面から向かってくる。
面白いなと思いました。
逃げるという選択肢もあったはずです。落ち葉の下にもぐればいい。それなのに、この蟹は向き合うほうを選んだ。自分より何百倍も大きいものに対して、持っている武器を掲げてみせた。
アカテガニは、普段は陸で暮らしています。林や草地に穴を掘り、そこで生活する。ところが卵を持った雌は、夏の満潮の夜、海まで下りていく。そして水際で腹を振り、幼生を海へ放つ。
海で生まれ、陸で育ち、産むときだけ海へ戻る。
その道のりは、蟹の体からすれば相当な距離です。道路を渡り、側溝を越え、崖を下りる。途中で車に轢かれるものもいる。それでも下りていく。誰に教わったわけでもないのに、決まった季節に、決まった方向へ動く。
目の前の一匹が、その旅をしたことがあるのかは分かりません。雄かもしれない。ただ、この体で林を歩き、穴を掘り、季節が来れば海を目指す個体がいる。そう考えると、落ち葉の上の小さな影が違って見えてきます。
私はしばらく待っていました。蟹はやがて鋏を下ろし、横向きのまま、葉の陰へ入っていきました。
都会にいると、生き物に出会う機会が減ります。鳥と、猫と、あとは虫くらいです。土の上を歩く時間そのものが少ない。
蟹が足元を歩いている。ただそれだけのことですが、しゃがんで見ていた数分間は、悪くない時間でした。急ぐ用事があったわけでもありません。
立ち上がって歩き出すと、また落ち葉が鳴りました。この下にも、あと何匹いるのだろうと思いました。
講談社のレビューサイトに掲載されました。
「会社をどうすれば持続させられるか」という悩みをお持ちの経営者の方は、読んで良かったと成るはず。
news.kodansha.co.jp/books/20…
【累計165万部突破!】弊社エージェント作家・井原忠政氏のロングインタビューが公開されました!
弊社でエージェントを担当させていただいている井原忠政先生の時代小説『三河雑兵心得』シリーズが、なんと累計165万部を突破いたしました!
日頃から応援してくださっている読者の皆様、全国の書店員の皆様、そして関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
この度、カルチャーメディア「Real Sound(リアルサウンド)」にて、井原先生のロングインタビュー記事が掲載されました。そしてそこにはなんと弊社のことも多く含まれています。
▼インタビュー記事はこちら realsound.jp/book/2026/09/po…
■ 娯楽小説家としての心得:「歴史をエンタメとして楽しんでほしい」
今回のインタビューでは、大ヒットシリーズ『三河雑兵心得』の執筆裏話から、井原先生が最も大切にされている「娯楽小説家としての心得」まで、たっぷりとお話しいただいています。
『三河雑兵心得』は、戦国時代を舞台に、歴史の表舞台には残らない“一介の雑兵”である主人公・茂兵衛の視点から描かれる人間ドラマです。有名武将たちの華々しい英雄伝ではなく、泥にまみれながらも逞しく生き抜く名もなき庶民の姿が、世代を超えて多くの読者の共感を呼び続けています。
インタビューの中で特に印象的なのが、井原先生の「歴史をエンタメとして楽しんでほしい」という言葉です。
「時代小説」や「歴史小説」と聞くと、「難しそう」「歴史の知識がないと楽しめないのでは」と身構えてしまう方も少なくありません。しかし、井原先生が目指しているのは、予備知識ゼロで開いても一気に引き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなる「圧倒的な面白さ」です。
史実を誠実に踏まえつつも、テンポの良い会話劇、リアリティ溢れる合戦描写、そして思わずクスッと笑えて最後にはホロリと泣ける人間模様。まさに「歴史×娯楽」の醍醐味が詰まった作品づくりの哲学が、インタビューの端々から溢れ出ています。
■ エージェントとして共に歩む想い
弊社では、井原先生が創作活動に集中し、読者の皆様へ最高のエンターテインメントを届け続けられるよう、エージェントとして作品プロデュースや様々な展開をサポートしております。
165万部という大きな節目を迎えた今も、井原先生の「とにかく読者を面白がらせたい」という情熱は留まることを知りません。シリーズを重ねるごとに熱量を増す『三河雑兵心得』の世界、そして主人公・茂兵衛の成長物語には、これからも目が離せない展開が目白押しです。
まだ作品を手に取ったことがない方はもちろん、すでに大ファンという方にとっても、作品の深みをより一層感じていただける読み応え抜群の内容になっています。
ぜひ記事をご一読いただき、イイネやシェアで一緒に盛り上げていただけると嬉しいです!
会社を大きくするな。
これが、二十五年経営してきた私の結論です。
一度、会社を拡大しようとしました。売上は伸びました。社員も増えました。その結果、潰れかけました。
月末が怖い。人件費が払えるか毎月ひやひやする。そのうえ、作家のエージェントである私が、面談と管理と会議で一日を終える。原稿を読む時間が消えた。自分が何屋なのか分からなくなりました。
そこで拡大をやめました。
人口が減り続ける国で、なぜ人を増やそうとするのか。AIが創造的な仕事まで担う時代に、なぜ会社を大きくする必要があるのか。
この二つの問いから、本書は始まっています。
書いたのは、きれいごとではありません。拡大して失敗した経緯。円卓に十人で座る会議の中身。人を採らずに仕事を回す方法。六十歳で事業承継を始めた理由。自社の内側を、数字も体制も開示しました。ここまで書いた経営書は、あまりないと思います。
いま苦しい経営者の方へ。
その苦しさは、あなたの能力不足ではありません。会社を大きくしなければならないという前提が間違っているのかもしれない。そう考えたことはありませんか。
人を増やすべきか迷っている方。独立を考えている方。成長し続けなければという空気に、どこか違和感がある方。
この本は、あなたのために書きました。
『会社は大きくするな! 小さな会社の経営論』鬼塚忠著、講談社刊。
amazon.co.jp/dp/4065449189
家を掃除していたら出てきました。下川裕治『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)。週刊朝日の連載をまとめた一冊で、何度も読み返しました。バックパッカーのバイブルのような本でした。
藤原新也『メメント・モリ』、沢木耕太郎『深夜特急』。この類の本が大好きでした。
だけど、もうこの頃の旅はできません。インド人の汗の染み込んだ枕カバーとか、ノミの出る部屋には泊まれない。いくら安くても無理です。
体が受け付けなくなったのもありますが、それだけではない気がします。
あの頃は、不便そのものが目的でした。バスが来ない。言葉が通じない。宿が見つからない。困ったことが起きるたびに、旅が濃くなった。予定通りに進まないことに価値があったのです。
いまはスマホで宿を取り、地図を見て、翻訳アプリで話します。便利になったぶん、困らなくなった。そして困らない旅は、記憶に残りません。
若さというのは、体力のことではないのかもしれない。不便を面白がれる能力のことだったのだと、この本を眺めながら思いました。
表紙は日に焼け、角が折れています。それでも捨てられずに、また本棚に戻しました。




















