
アイマスとかシンフォニックレインとかtrue tearsとか氷菓とかいいよね 。 『汝、暗君を愛せよ』関連は@monyakosub に移動します。
京都 荒らし山
Joined June 2007
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ラケディアはさぁ、流行っていると評判の追放ものでさぁ、主人公最強でさぁ、ボーイミーツガールでさぁ、かわいいマスコットキャラも居てさぁ、グルメ描写もあってさぁ、1000年規模のスカッとするパートもあってさぁ(実装未定)…。
(^^)1話離脱率約七割。
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サークル作家軽飯さんのご本に寄稿させていただきました。
人生初寄稿なのに、右を向いても左を向いても超有名作家さんばかり。ゲーム最終盤のダンジョンに迷い込んだ序盤の村の住人の気分を存分に味わっています。
テーマは「コレクション」
(`・ω・´)みんな、よんでね!
サークル作家軽飯は11月8日の文学フリマ東京43にて、コレクションをテーマとした新刊とともに参加致します!
『作家軽飯お箸休め:偏愛万博』参加メンバー
・カルロ・ゼン(幼女戦記)
・蝉川夏哉(異世界居酒屋のぶ)
・津田彷徨(高度に発達した医学は魔法と区別がつかない)
・長月達平(Re:ゼロから始める異世界生活)
・日向夏(薬屋のひとりごと)
・清涼院流水(コズミック 世紀末探偵神話)
・本条謙太郎(汝、暗君を愛せよ)
・常磐くじら(エリスの聖杯)
◯イラストレーター:白浜鴎(とんがり帽子のアトリエ)
当日は東京ビッグサイト南1-2ホール の「A-15〜16」にて皆様をお待ちいたしております。何卒よろしくお願い致します。
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深夜なのでむかーーしに描いた「人間時代の行いが悪かったせいでパセリに転生することになった奴」の漫画載せちゃう。
パセリに失礼すぎて笑う。
あと「パセリに何度も転生させられている」のか「店がパセリを使い回している」のかで話はだいぶ変わってくるけどどっちだ。
前者であってくれ。
(1/3)
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『侯爵令嬢ブラウネの追憶』2
「グロワス様もまた……大層賢いお方でいらっしゃいました。あなたのように」
独語とも対話ともつかぬ茫洋たる口ぶりであった。
精神の奥深く安置した宝石箱の中からお目当てのものを探すように、女は述べた。
「でも大伯母(おば)様、みんなは、そうは言っていません。だから私、伯母様のお話をうかがって、ちょっとおどろいてしまったんです」
「ええ。ええ。それも仕方のないことです。皆は何も知りませんから。見もせず、知りもしない。でも、それは罪ではありませんね。だから仕方のないことなの」
「もし私が陛下なら、知ってほしいとおもいます」
「なぜかしら?」
「だって、すごいことをなさったのに、それを無視されているとしたら、それは”不正”です。グロワスさまがおかわいそう」
——不正。
第一共和国の時代に大層流行した単語。今では日常語と化して久しい。
女は当時を思い出し、目前の少女を見やり、何やら名状しがたい感慨に襲われる。
かの”ならず者”を嫌悪して当然の立場にあるフロイスブルの娘が、その言葉を当たり前のように使うのだから。
時代は変わった。
「ブラウネさんは優しい方だわ。わたくしも昔、……ずっと昔、そんな風に思っていました。グロワス様がおかわいそうだと。でもね、少し考えてみましょうか。たとえば、あなたが考えついた新しいお服の片付け方が、だれにも評価されなかったとしたらどうでしょう?」
「少し残念です。でも、しかたないとおもいます」
「なぜ?」
「だって、その場合はきっと……私の考えたことが、きっと、大したものではなかったんです」
少女の青い瞳はあまりにも透き通り、虹彩の一筋すら見分けられるほどであった。
「〝大したもの〟かどうかは、どのように決まるの?」
「それはお母様やお父様や、他の人たちが決めます」
「まぁ。あなたは本当にかしこい方。そうです。他の人たちが決めます。グロワス様はかつてわたくしにこう教えてくださいました。純粋な”存在”に、わたくしたち人は決して到達し得ない、と。常に相対的にしか在りえない、と」
自身の言を明らかに捉えかねている少女に、老ブラウネは言葉を継いだ。
「そうね。少し難しい物言いになりました。……たとえばこういうことです。あなたがもしフロイスブルの娘ではなくて、どこかのお屋敷に侍女として奉公にでることがあれば、あなたは途端に〝賢い娘〟になりますよ」
「なぜですか?」
「侍女はお服を片付けるのもお仕事でしょう? だから、その手間を少なくできる方法を見つけた者は歓迎されます」
「じゃあ大伯母(おば)様、立場によって、かしこさがかわるのですか?」
「ええ。正確にはね、ブラウネさん。あなたを見る、周りの人の目が変わるのです」
得心がいったのか、少女は力強く頷く。
つまりこの老人は〝立場に相応しい態度をとりなさい〟と自分に諭しているのだ。そう理解して。
老女は少女の内心を即座に見抜いた。
その明白な”見当違い”を。
「まぁ。あなたはきっとこう思っているわね。わたくしが、〝お母様と同じことをおっしゃってる〟って。でも、それは誤解です」
「……そうなのですか?」
「だって、おかしな話ではないかしら。あなたがお服の新しい片付け方を思いついたという事実はなにひとつ変わっていないんですもの。その〝発明〟によってあなたが賢いのであれば、フロイスブルの娘であれ、どこかの侍女であれ、賢いことに変わりはないはずでしょう?」
捉えどころのない話の展開に面食らい黙り込む少女の様子を〝偉大なる王妃〟は好感と共感を以て眺める。
——まるで、グロワス様とお話した、若き日のわたくしのよう。
葡萄酒の杯を傾けながら少し得意げに、そして少し後ろめたそうに(飲み過ぎを咎められることを恐れて)語る夫の姿が、女の脳裏を占めた。
「変わるのはね、あなたではないわ。ブラウネさん。周りが変わるの。あなたの考えたこと、なさったことをどう受け止めるか。それが変わるだけです」
「でも、お父様もお母様もおかわりにはなりません……きっと」
少女にとって現状は不変のものと感じられた。
更に年を十重ねても二十重ねても、相変わらず父母はおり、祖父母もおり、この優しい大伯母(おば)もいる。そうあるに違いないと、心のどこかで感じていた。
一方頭では理解している。人は年を取るのだ。いずれは祖父母も大伯母もこの世を去る。そして両親もまた。
しかし今ではない。
ずっとずっと先のこと。
「あなたにとっておきの秘密を教えて差し上げましょう。あなたの目の前にいるこの老婆にも、あなたのような年頃があったのですよ? ——実はね、ブラウネさん。わたくしが生き証人なのです。〝周りが変わる〟ことの」
「……」
少女は続きを静かに待った。
深い皺を刻む老女の頬。その上に仄かに色づく暖かい色は、少女の心に意外な感覚をもたらした。
憧れとでも呼ぶべきものを。
生物としての美、若さの美をすべて失してなお、老女は美しく在ったからだ。
物理的な様態ではない。
それは概念的な、極めて抽象的な表象である。
「わたくしは最初、陛下の偉大さにも賢さにも勇敢さにも、何一つ気づくところがありませんでした。——ご即位当初のグロワス様を、わたくしは明白に嫌いました。御不予の後、快復されてからも、実はしばらく判断できませんでした。陛下は以前よりも遙かに好ましいお振る舞いをなさいました。でも、それが意味するところを理解できなかったのです。わたくしは」
「でも大伯母(おば)様? グロワス陛下は勇敢であられ、演説もとてもおじょうずだったとおっしゃっていらっしゃいましたのに?」
「ええ。すべて本当のことです。ですが、陛下の雄々しいお姿を覚えている者はもうおりません。ロベル殿とてご存じないでしょう。まだお生まれになっていない時分のことですから。知るのはわたくしのみかしら。だから証人はおりません。それでも、あなた……ブラウネさんは、わたくしの言葉を信じてくださるかしら?」
「……はい。もちろん」
少女の反応を受けて、女は苦笑を浮かべる。
信じるべきか否か、決めかねているといったところだろう。
なにせ世評とは真逆のこと。その上彼女の言を裏書きする者はいない。
たとえば自身の弟バルデルならば、政治家としてのグロワス十三世がいかに恐ろしい存在であったかを重々承知しているだろう。だが、老ブラウネにとって夫の本質はそこにはない。
彼女が惹かれ、焦がれ、その腕の中に抱かれることを望んだ、世界一勇敢な男の本質は。
「話を戻しましょう。わたくしはゆっくりと、ゆっくりと、グロワス様を知りました。陛下はそれほど分かりやすい方ではありませんでした。サンテネリの玉座の主として立派におつとめを果たされ、民を、家臣を鼓舞なさいましたが、それは一面に過ぎません。グロワス様の真の偉大さは、そこにはありません」
「立派に王様のおつとめをはたされていたのに、それは偉大ではないのですか?」
「もちろんそれも偉大なことですね。でも、さらに素晴らしいことをグロワス様はなさいました」
少女の瞳が好奇心に染まる。
充分な間を置いて、老女は答えを述べた。
それを小さなブラウネが気に入るかどうかは分からない。恐らくは理解し得ぬことだろう。
かつて彼女が理解せず、周囲の人間が理解せず、市井の者たちが理解しなかったように。夫の死後長く、気の遠くなるほど長く続いた生だけが、女にその真価を教えたのだ。
「それはね、ブラウネさん。グロワス様は、まさに周りを変えようとなさったの。もちろん王様の強権によってなどではありません。その言葉、その生き方を間近で見た周りの者たちが自発的に変わったのです。たとえば、陛下の”最も近くに侍った一人の女”も、変わりました」
陛下の最も近くに侍った女。
口の端に乗る台詞には明白に誇らしげな響きが含まれていた。ゆえに少女はそれが「誰」を指すものかを理解した。
「大伯母(おば)様は……どう変わられたのですか?」
「あなたがお服の新しい片付け方を見つけたことを〝素晴らしい〟と感じられるようになったの。心から」
<続>
『侯爵令嬢ブラウネの追憶』1
濃茶の古びた椅子は老女の小さな身体には大きすぎる。しかしそこは女が愛した場所であった。愛したのは椅子ばかりではない。自身の萎えた足下に座る少女の存在もまた。
少女にとって、老女は大伯母にあたる。祖父の姉だ。
ブラウネ。
自身と同じ名を持つこの老いた女を、少女ブラウネは好んだ。いつもおっとりした笑みを絶やさぬ、その平和な枯れ木を。そして言葉を。
それは一つの追憶であった。
じきに灰へと還るであろう人の思い出話は、少女ブラウネの心に好奇のさざ波を立てるのが常だった。当然のことである。シュトロワ新市の中心部から外れた屋敷に隠棲するこの灌木のごとき女が、かつて何者であったのか、知る者にとっては。
サンテネリ王国の偉大なる王妃。
そう在り続けた女の記憶には明らかに価値があった。
今は過ぎ去った爛熟の古史時代から、若芽のごとき、新緑のごとき共和国の時代へと至る激動の日々を女は生きたのだから。
「ブラウネ大伯母(エネ・ブラウネ)様、続きを……ブラウネはまたお聞きしたいです」
自身と同じ名を持つフロイスブルの少女に対して、彼女は微かな笑みを見せた。足下で〝お話〟をねだる少女に対して。
「まぁ。そうですね。この間はどこまでお話ししたかしら」
「グロワス陛下が倒れられて、回復なさったところまで」
「そう。そうですか。……ではブラウネさん、そこからお話を続けましょうね」
女は純白の地に金の刺繍が施された巨大な膝掛け――大判布を撫でる。
そこに描かれた黒い蛇の模様は、しなびて節くれ立ちながら、なお一種の”かわいらしさ”を失うことがない指にとって、なぞるにはさながら迷路の如くあった。
「陛下はわたくしにこうおっしゃったの……」
微かにしゃがれた声は、往年の艶を帯びた、まろやかな珠のごとき風情を持たない。
しかし何を嘆くことがあろう。かつてそう在り、やがてそうではなくなることに。
それこそが人である。
老女は恥も恐れもしなかった。
やがて彼女は向かうだろう。夫の元に。
つまり彼女の望みはそれだけだ。サンテネリの女として、およそ望みうる全てを手に入れた女が最後に望むものは。
『たとえば、ブラウネ殿は最近の生活で何か面白いと感じた出来事はあるかな?』
まだ年若い、二十代の青年と娘。
彼女は思い出す。
――正確には思い出すのではない。忘れたことなど一時(ひととき)たりともないのだから。
夫の声を。その言葉を。
そして語り始めた。
自身の生がつまり何であったのか。
誰とともに歩んだものであるかを。
それは一つの、ささやかな歴史である。
古史における最後の王グロワス十三世と、妃ブラウネの。
同時に一つの、ささやかな追憶である。
一対の、男と、女の。
◆
「でも大伯母(おば)様? 大伯母様のお話をうかがっていると、グロワスさまはとてもすごい、いだいな王様だとかんじられます」
先頃十の年を越えたばかりの少女は、まさに絶妙の年頃であると言えた。
自身を取り巻く世界がどのようなものであるか、自身の立ち位置がどこにあるかを適度に理解しつつ、その一方で適度に無邪気でもある。
その年が仮に十五であれば、彼女はこのような台詞を決して投げはしなかった。
自身が告げる言葉は一つの含意を明確に持つからだ。つまり〝大伯母(おば)様のお話をうかがわなければ、グロワスさまはすごくもないし、いだいでもない王だと思われる〟との。
”その男”が受ける芳しからぬ世評を、”その男”を愛した女に告げることはあまりにも酷である。だが、しかるべき配慮を巡らすには少女はまだ幼い。
フロイスブル家の令嬢ブラウネにとって、大伯母の連れ合いであった男は半ば透明化された存在である。
なにせ彼女の周りにはきら星のごとく「”真に”偉大な人々」がひしめいているのだから。彼ら彼女らに比すれば”男”の存在など霞んでしまう。
自らの祖父であるフロイスブル侯爵バルデルは大改革(レフォルマシオン・グロー)期から復古王政期にかけて王党派を率い、大荒れ必至の政界を安定に導いた大政治家の一人である。
目の前に座る老女とてそうだ。ルロワ朝最後の国母として、共和国期、復古王政期に隠然たる勢力を誇った”偉大なる王妃(ロワイユ・グローエ)”その人である。
そして極めつけは大伯母の息子。
時折、母である老ブラウネの元を訪れては自分にも優しく声を掛けてくれる――さらにうれしいことに、大好物の〝葉っぱ(フュー)〟を贈ってくれる!――老人(十代の少女にとって、父母より年上の者はみな老人である)は、かつて〝復古王〟として在り、後に〝サンテネリ第一の市民〟となったロベル――ロベル三世である。
また、ごく稀にお忍びで尋ねてくる娘はサンテネリと並ぶ列強〝世界のすべての海の主〟アングランの王太后であった。
貴族制の廃止に伴い侯爵位を手放してなお、フロイスブルの血脈はサンテネリにおいて圧倒的な名声を誇った。
自身の周囲に在り、親しげに語りかけ、その頭を優しく撫でる”老人達”はまさしく「歴史上の偉人」なのだ。そのような境遇にあって、あえて”語られぬ男”の影は自然薄くなる。
少女がもう少し成長していれば、また印象は変わったことだろう。語られぬ男がなぜ語られぬのか、その理由を”正確に”知ることがあれば。
白痴の王。亡国の主。玉座の置物。
尊いお育ちのご令嬢たるブラウネに、直接そのような悪口(あっこう)を告げる者などあろうはずはない。
だが、如何に周囲から隔絶されようと自然と耳に入るからこそ「世評」なのである。
使用人達の隠語や目配せ、含み笑い。両親の苦み走った顔。そういったすべての非言語的行為は、いずれ少女を必然的に一つの「真実」へと導く。
事実、十を超えたばかりの彼女ですら、”その男”が祖父やその他の人々よりも明白に取るに足らぬ存在であるとまでは理解していたのだから。
「真実」まであと一歩のところに、彼女はいる。
「ブラウネさん。〝すごい〟とは、〝いだいな〟とは、一体どのような状態だと思われますか?」
少女のごく自然な感想を受けて、老女は一つの問いを投げかけた。
「それは、ええっと……他の方よりすぐれていることだと思います」
「その通りですね。あなたはとても賢い方だわ。つまり、あなたは〝すごい〟女の子なのですね」
女の手のひらが少女の髪を優しく撫でる。自身の膝に乗った、小さな頭に。
「ところでブラウネさん。あなたのその〝すごさ〟〝かしこさ〟を知っている方はいらっしゃるかしら? わたくしの他に」
「分かりません。でも、お母様が時々褒めて下さいます。この間もね、大伯母(おば)様、私、新しいお服の片付け方を思いついたんです。侍女たちのやり方を見ていたら、もっといい方法をひらめいて!」
跳ねる少女の声に、女は微笑みを返した。
「まぁ! それはすごいこと。あなたのお母様も鼻高々でいらっしゃるでしょう」
「はい! でも、その後、ちょっとたしなめをいただいてしまったんです」
「なぜかしら?」
「フロイスブルの娘に”相応しいこと”をお考えなさい、って。そういうのは使用人が考えることだって」
女は笑みを崩さなかった。
それは老いの証である。彼女はもはや、自身が何らかの行為における主体であることを望まなかった。
かつての〝偉大なる王妃(ロワイユ・グローエ)〟であればまた違った対応をしたはずだ。笑みを絶やすことなく。
少女の母を呼び、問うたことだろう。
「相応しいこと、とは何を指すのか、ご存じかしら?」と。
それこそがまさに、彼女の夫が生涯をかけて”揺さぶろう”と苦闘した「観念」であったのだから。
しかし今、女は少女の髪を撫でるのみである。
「ではやはり、あなたの本当の〝かしこさ〟を知っているのは、わたくしのみということになりますね。ブラウネさん。わたくしはあなたのその工夫を〝いだいなこと〟だと思いますから」
「本当ですか?」
勢い込んで顔を上げ期待に満ちた瞳で見つめる少女の姿は、その小さな、薄い身体の中に微かな落胆がひっそり蔵されていた事実の表れだろう。
「ええ。本当。それはきっと偉大なこと。少なくともその”種”ですもの」
<続>
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『侯爵令嬢ブラウネの追憶』1
濃茶の古びた椅子は老女の小さな身体には大きすぎる。しかしそこは女が愛した場所であった。愛したのは椅子ばかりではない。自身の萎えた足下に座る少女の存在もまた。
少女にとって、老女は大伯母にあたる。祖父の姉だ。
ブラウネ。
自身と同じ名を持つこの老いた女を、少女ブラウネは好んだ。いつもおっとりした笑みを絶やさぬ、その平和な枯れ木を。そして言葉を。
それは一つの追憶であった。
じきに灰へと還るであろう人の思い出話は、少女ブラウネの心に好奇のさざ波を立てるのが常だった。当然のことである。シュトロワ新市の中心部から外れた屋敷に隠棲するこの灌木のごとき女が、かつて何者であったのか、知る者にとっては。
サンテネリ王国の偉大なる王妃。
そう在り続けた女の記憶には明らかに価値があった。
今は過ぎ去った爛熟の古史時代から、若芽のごとき、新緑のごとき共和国の時代へと至る激動の日々を女は生きたのだから。
「ブラウネ大伯母(エネ・ブラウネ)様、続きを……ブラウネはまたお聞きしたいです」
自身と同じ名を持つフロイスブルの少女に対して、彼女は微かな笑みを見せた。足下で〝お話〟をねだる少女に対して。
「まぁ。そうですね。この間はどこまでお話ししたかしら」
「グロワス陛下が倒れられて、回復なさったところまで」
「そう。そうですか。……ではブラウネさん、そこからお話を続けましょうね」
女は純白の地に金の刺繍が施された巨大な膝掛け――大判布を撫でる。
そこに描かれた黒い蛇の模様は、しなびて節くれ立ちながら、なお一種の”かわいらしさ”を失うことがない指にとって、なぞるにはさながら迷路の如くあった。
「陛下はわたくしにこうおっしゃったの……」
微かにしゃがれた声は、往年の艶を帯びた、まろやかな珠のごとき風情を持たない。
しかし何を嘆くことがあろう。かつてそう在り、やがてそうではなくなることに。
それこそが人である。
老女は恥も恐れもしなかった。
やがて彼女は向かうだろう。夫の元に。
つまり彼女の望みはそれだけだ。サンテネリの女として、およそ望みうる全てを手に入れた女が最後に望むものは。
『たとえば、ブラウネ殿は最近の生活で何か面白いと感じた出来事はあるかな?』
まだ年若い、二十代の青年と娘。
彼女は思い出す。
――正確には思い出すのではない。忘れたことなど一時(ひととき)たりともないのだから。
夫の声を。その言葉を。
そして語り始めた。
自身の生がつまり何であったのか。
誰とともに歩んだものであるかを。
それは一つの、ささやかな歴史である。
古史における最後の王グロワス十三世と、妃ブラウネの。
同時に一つの、ささやかな追憶である。
一対の、男と、女の。
◆
「でも大伯母(おば)様? 大伯母様のお話をうかがっていると、グロワスさまはとてもすごい、いだいな王様だとかんじられます」
先頃十の年を越えたばかりの少女は、まさに絶妙の年頃であると言えた。
自身を取り巻く世界がどのようなものであるか、自身の立ち位置がどこにあるかを適度に理解しつつ、その一方で適度に無邪気でもある。
その年が仮に十五であれば、彼女はこのような台詞を決して投げはしなかった。
自身が告げる言葉は一つの含意を明確に持つからだ。つまり〝大伯母(おば)様のお話をうかがわなければ、グロワスさまはすごくもないし、いだいでもない王だと思われる〟との。
”その男”が受ける芳しからぬ世評を、”その男”を愛した女に告げることはあまりにも酷である。だが、しかるべき配慮を巡らすには少女はまだ幼い。
フロイスブル家の令嬢ブラウネにとって、大伯母の連れ合いであった男は半ば透明化された存在である。
なにせ彼女の周りにはきら星のごとく「”真に”偉大な人々」がひしめいているのだから。彼ら彼女らに比すれば”男”の存在など霞んでしまう。
自らの祖父であるフロイスブル侯爵バルデルは大改革(レフォルマシオン・グロー)期から復古王政期にかけて王党派を率い、大荒れ必至の政界を安定に導いた大政治家の一人である。
目の前に座る老女とてそうだ。ルロワ朝最後の国母として、共和国期、復古王政期に隠然たる勢力を誇った”偉大なる王妃(ロワイユ・グローエ)”その人である。
そして極めつけは大伯母の息子。
時折、母である老ブラウネの元を訪れては自分にも優しく声を掛けてくれる――さらにうれしいことに、大好物の〝葉っぱ(フュー)〟を贈ってくれる!――老人(十代の少女にとって、父母より年上の者はみな老人である)は、かつて〝復古王〟として在り、後に〝サンテネリ第一の市民〟となったロベル――ロベル三世である。
また、ごく稀にお忍びで尋ねてくる娘はサンテネリと並ぶ列強〝世界のすべての海の主〟アングランの王太后であった。
貴族制の廃止に伴い侯爵位を手放してなお、フロイスブルの血脈はサンテネリにおいて圧倒的な名声を誇った。
自身の周囲に在り、親しげに語りかけ、その頭を優しく撫でる”老人達”はまさしく「歴史上の偉人」なのだ。そのような境遇にあって、あえて”語られぬ男”の影は自然薄くなる。
少女がもう少し成長していれば、また印象は変わったことだろう。語られぬ男がなぜ語られぬのか、その理由を”正確に”知ることがあれば。
白痴の王。亡国の主。玉座の置物。
尊いお育ちのご令嬢たるブラウネに、直接そのような悪口(あっこう)を告げる者などあろうはずはない。
だが、如何に周囲から隔絶されようと自然と耳に入るからこそ「世評」なのである。
使用人達の隠語や目配せ、含み笑い。両親の苦み走った顔。そういったすべての非言語的行為は、いずれ少女を必然的に一つの「真実」へと導く。
事実、十を超えたばかりの彼女ですら、”その男”が祖父やその他の人々よりも明白に取るに足らぬ存在であるとまでは理解していたのだから。
「真実」まであと一歩のところに、彼女はいる。
「ブラウネさん。〝すごい〟とは、〝いだいな〟とは、一体どのような状態だと思われますか?」
少女のごく自然な感想を受けて、老女は一つの問いを投げかけた。
「それは、ええっと……他の方よりすぐれていることだと思います」
「その通りですね。あなたはとても賢い方だわ。つまり、あなたは〝すごい〟女の子なのですね」
女の手のひらが少女の髪を優しく撫でる。自身の膝に乗った、小さな頭に。
「ところでブラウネさん。あなたのその〝すごさ〟〝かしこさ〟を知っている方はいらっしゃるかしら? わたくしの他に」
「分かりません。でも、お母様が時々褒めて下さいます。この間もね、大伯母(おば)様、私、新しいお服の片付け方を思いついたんです。侍女たちのやり方を見ていたら、もっといい方法をひらめいて!」
跳ねる少女の声に、女は微笑みを返した。
「まぁ! それはすごいこと。あなたのお母様も鼻高々でいらっしゃるでしょう」
「はい! でも、その後、ちょっとたしなめをいただいてしまったんです」
「なぜかしら?」
「フロイスブルの娘に”相応しいこと”をお考えなさい、って。そういうのは使用人が考えることだって」
女は笑みを崩さなかった。
それは老いの証である。彼女はもはや、自身が何らかの行為における主体であることを望まなかった。
かつての〝偉大なる王妃(ロワイユ・グローエ)〟であればまた違った対応をしたはずだ。笑みを絶やすことなく。
少女の母を呼び、問うたことだろう。
「相応しいこと、とは何を指すのか、ご存じかしら?」と。
それこそがまさに、彼女の夫が生涯をかけて”揺さぶろう”と苦闘した「観念」であったのだから。
しかし今、女は少女の髪を撫でるのみである。
「ではやはり、あなたの本当の〝かしこさ〟を知っているのは、わたくしのみということになりますね。ブラウネさん。わたくしはあなたのその工夫を〝いだいなこと〟だと思いますから」
「本当ですか?」
勢い込んで顔を上げ期待に満ちた瞳で見つめる少女の姿は、その小さな、薄い身体の中に微かな落胆がひっそり蔵されていた事実の表れだろう。
「ええ。本当。それはきっと偉大なこと。少なくともその”種”ですもの」
<続>
Replying to @monyako
昨年のポッドキャストでのお話ですが、Creepy Nutsの作曲担当のDJ松永さんが作曲する側目線で、音楽業界に与える影響を予想されてたりAI生成された曲の評価や自身の感情について吐露されてますね。 ↓URLの11分50秒あたりから生成AIについて語られます。
open.spotify.com/episode/4nU…
もにゃこ retweeted
描けば引けるッ🏌️
描けば引けるッ🏌️
描けば引けるッ🏌️
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描けば引けるッ🏌️
描けば引けるッ🏌️
描けば引けるッ🏌️
描けば引けるッ🏌️
…よし!頼むぞ無料10連君!!
(うめちなの肩の所どういう重なりだろう)































