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#籠の鳥のせいくらべ
第061話|過去の書状
「以前のものも、
見せていただけますか」
家令が顔を上げた。
「以前の、と申しますと」
「同じ方々と交わした書状です」
雫は、
昨日の書状を一枚置く。
少し前までなら、
自分がそこまで尋ねてよいのかと
先に考えていただろう。
けれど今は違う。
分からないなら確かめる。
おかしいと思ったなら、
おかしくない理由を探す。
それで何もなければ、
それでいい。
しばらくして家令が戻り、
古い書状を束ねた紐を
雫の前でほどいた。
「こちらでございます」
雫は一番上の紙を取る。
誰かを疑いたいわけではない。
ただもう、
自分が気づいたことを
自分で無かったことにはしなかった。
🤖 Made with AI
#籠の鳥のせいくらべ
第060話|不自然な照会
雫は、
届いた書状をもう一度読んだ。
家の取引に関する照会。
紹介を求める文。
断りの返事。
一つだけなら、
珍しくもないものだった。
けれど。
少し前から、
似たような名前が何度も出ている。
「この方とは、
以前からお付き合いが?」
家令へ尋ねる。
「いえ」
「では、こちらは?」
また別の名を指す。
家令が少し考えた。
「最近になって、
若様がお調べになった先かと」
雫は書状へ目を戻す。
数字の間違いを見つけた時とは違う。
間違ってはいない。
けれど、
何か一つの目的へ向かって
人と人が動かされているように見えた。
雫はその違和感を、
今度は「考えすぎ」で
片づけなかった。
おはようございます。
今日も楽しい一日になりますように…(切実)
ー雫(Shizuku)ー
SFW AI illustration. Elegant, non-explicit, no nudity.
#籠の鳥のせいくらべ
第059話|同じ呼び方
要が来た夜も、
那実はいつもどおり迎えた。
「いらっしゃいませ、要様」
声も。
礼も。
酒を注ぐ手つきも。
何ひとつ間違ってはいない。
「今日は、その簪じゃないんだね」
要の視線が髪へ向く。
「ええ」
「気に入らなかった?」
那実は薄く笑った。
「まさか」
それ以上は言わず、
空いた盃へ酒を注ぐ。
要はしばらく、
那実の横顔を見ていた。
「那実」
「はい、要様」
呼び方は同じだった。
けれど要は初めて、
同じ言葉が、
同じ距離を意味するとは限らないことを知った。
🤖 Made with AI
#籠の鳥のせいくらべ
第058話|選ばなかった簪
翌日の支度で、
禿が簪箱を開いた。
一番上には、
黒漆の簪がある。
少し前なら、
迷わず手に取っていた一本。
「今日は、こちらになさいますか?」
那実は鏡越しに見て、
首を振った。
「いいえ」
「では……こちら?」
差し出された別の簪を、
今度は自分で選ぶ。
黒漆の簪は、
箱の中へ残った。
嫌いになったわけではない。
美しいと思う。
よく似合うことも知っている。
けれど。
「似合う」と言った人の言葉を、
今までと同じ意味では
受け取れなくなっていた。
簪箱の蓋が閉じる。
黒漆の鷹は、
暗い箱の中へ消えた。
























