
ALT 印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 夏といえば、お団子ヘアである。べたべたと張り付く髪を集めて持ち上げ、まとめてから捻ってゴムで縛った。簡単なのに崩れにくく、首にも触れないから涼しい。この髪型をすると、夏が来たのだとあらためて感じる。 「おっ! 夏の風物詩、ココのお団子じゃん」 「もうそんな季節か……てか、うなじんとこ、赤くなってね? 虫にでも刺されたのか?」 「ほんとだ、赤くなってる。でもこれはどう見てもキスマークじゃね? 童貞の春千夜くんにはわからなかったでちゅか~?」 「童貞じゃねぇわ! 九井ってそういうの許すタイプじゃねぇだろ。だから、キスマークっていう選択肢がなかった」 後ろから聞こえる会話に急いでうなじを隠す。心当たりは全くない。ないけど、オレのうなじにキスマークを付けれるやつはひとりしかいない。頭の中にその男の顔が浮かぶ。でも、ありえない。アイツはセフレにキスマークなんてつけるやつじゃない。 「え、もしかして知らなかった? 見せびらかしてんのかと思った」 「……知らなかった」

ALT 「マジ? めちゃくちゃ目立つ場所についてるけど。でも、ココからは絶対に見えないとこ」 「つーか、オマエにそんな相手いたのかよ」 「……いや、」 いないと言おうとしたところで、勢いよくドアが開いた。オレを含め、全員の視線がそっちに向けられる。ふぁ、とあくびをしながら入って来たのは蘭だった。目が会った瞬間、やさしく微笑まれて、思わず目を逸らしてしまう。 「なんか盛り上がってたじゃん。何の話~?」 「ココのうなじにキスマーク付いてるって話」 「あ、ほんとだ~。がっつりついてんね。ずいぶんと独占欲強そうじゃん。恋人?」 つけたのお前だろと言いたいところだが、言えるわけがなかった。蘭との関係は、三途にも竜胆にも知られていない。ふたりだけのひみつなのだ。バレたらめんどくさいことになりそうだし、絶対にバレたくない。 「……や、ただのセフレ。普段はこういうことしてくるやつじゃねぇんだけど」 「へぇ? でも、つけてきたってことはさぁ、ココちゃんのこと、好きになっちゃった

ALT んじゃない? 誰にも渡したくねぇなぁってつけたんかも」 口元を緩めながら言った蘭が、するりとうなじを撫でてくる。びくっと震えれば、鼻で笑われた。 「にしてもすごいねぇ、これ。相当熱い夜を過ごしたんじゃない?」 「おい、蘭! セクハラだぞ! あとジジくせえ!」 「別に減るもんじゃねぇしいいじゃん。童貞の三途くんには刺激が強かったかな~?」 「童貞じゃねぇわ!」 三途のおかげで話が逸れたことに安堵しながら、キーボードへと手を伸ばす。熱い夜過ごしたわ。テメェとな。なんて、脳内で言い返せば、まるでそれが蘭に聞こえてしまったのかと不安になるくらいのタイミングで蘭に肩を叩かれる。 「オレも昨日の夜、好きな子と熱い夜過ごしたんだよね」 「テメェの話なんて聞いてねぇよ!」 「え、兄ちゃん好きな子いんの!?」 「すっげぇかわいかった。めちゃくちゃ敏感でさ~感じやすくて、イキやすいの。しかも、イクとき、必ずオレにしがみついて来てさ。マジでかわいくね? でも、口は悪く

ALT て文句ばっかり。まあ、そこがかわいいんだけどさ」 顔がぶわりと熱くなる。きっと、耳まで真っ赤になってしまっているだろう。盛り上がっている三人に気付かれないよう、仕事に没頭して聞こえていないふりをした。でも、そんなにうまくはいかない。 「ココ、顔真っ赤じゃね? セフレいるくせにこういう話恥ずかしくなっちゃう系?」 「……いや、」 「ビッチのくせに下ネタは苦手なのか?」 「ビッチじゃねぇよ。童貞野郎。オレはひとりとしか寝てねぇし。そいつだけで満足だわ」 「童貞じゃねぇわ!!」 「え、なにそれマジ!? セフレなのに!? あのココを満足させるとか相当テクニシャンじゃん!」 驚いたように言った竜胆の隣で、蘭が顔を背けていた。見える横顔と耳は、ほんのりと赤く色付いている。仕返しだ、ばーか。



















