タワマンライジングアゲイン
「……恥ずかしいことだが本当は、今でも少しだけ信じているのだ。いつかまた金利が下がり、湾岸タワマンが再びライジングする。ただのお賃金労働者の自分が『先見の明ある資本家』として返り咲き、己の相場観が、ふたたび持て囃される日が来るのではないかと。」
「……ああ、全く、何と己は救いがたい馬鹿者であったことか。こんな未練がましい頭で、一体どうしてこの莫大な残債から抜け出せよう」
「さらばだ、友よ。夜明けが近づいている。日銀の総裁会見の時間が来る。己はもう、ポストを全消しして、鍵垢へと姿を変えねばならぬ」
声はそこで途絶えた。
豊洲公園の茂みの中から一匹の虎がデッキに躍り出た。
虎は高くそびえるタワマンの最上階、すでに光を失ったティアラに向かって二声三声咆哮したかと思うと再び豊洲公園の茂みの中へと姿を消し、二度とタイムラインに現れることはなかった。
声出してワロタw
『マンクラの草子』
春はペアローン。
やうやう高くなりゆく物件価格、少し背伸びして、世帯年収の限界まで借り入れたる。
夏は金利。
固定のころはさらなり、変動もなほ、日銀の発表にマンクラの多く飛びちがひたる。また、ただ0.1%, 0.2%など、ほのかに上がりて行くも恐ろし。含み益など消えゆくも恐ろし。
秋は手付放棄。
引渡しの期日いと近うなりたるに、含み損から逃るるとて、五百万、一千万など泣きながら捨てるさへあはれなり。まいてキャンセル住戸などの連ねたるが、いと多く見ゆるは、いと悲し。日入り果てて、暴落の足音、ローン審査落ちの阿鼻叫喚など、はた言ふべきにあらず。
冬は有料note。
相場のいと冷えきりたるは言ふべきにもあらず、含み損のいと大ききも、またさらでもいと苦しきに、タワマンなど急ぎ売り払ひて、「これからは新NISAでオルカン一択」などと持て渡るも、いとあさまし。昼になりて、米国株も下落もていけば、かつてのドヤ顔のポートフォリオも、青きマイナスがちになりてわろし。









