Pinned Tweet
【コミュニティ紹介メディア運営中】
AI時代に価値が高まるのは、人と人のつながりだと思っています。
事業の成長も、採用も、地域活性化も、コミュニティから動かせる。それを確かめたくて、第一線で活躍する運営者を全国に取材しにいっています。
これまでの取材はYouTubeで公開中です。
出演希望の企業・個人の方はお気軽にご連絡ください。
app.aitemasu.me/u/ma1998042/…
製品だけでは、ファンを引き止められない。
株式会社ビクセンが2026年10月30日、公式Discordサーバー「Vixen Official」を開設しました。天体望遠鏡や双眼鏡を製造するビクセンが、天体観測や自然観察を楽しむ世界中のユーザーのために設けた双方向の場です。開設から1か月以内に参加したユーザーには限定ロール「Early Birds」が付与されます。公式キャラクター「みちかけくん」の限定スタンプや、開発者の言葉と会社の歴史を振り返る限定スレッドも用意されていると説明されています。
製品を手にしたユーザーが次に求めるのは、その製品を「もっとうまく使いたい」という体験です。天体観測であれば、より鮮明な星を捉えるための設定、撮影した写真を他の観測者と共有する喜び、機器の選び方や使い方を語り合える仲間。そういった体験は、製品単体では提供できません。コミュニティがあって初めて生まれます。
経営という視点からコミュニティを見ると、二種類の資産があります。ひとつは、広告やキャンペーンが生み出す「フロー型」の集客です。もうひとつは、ユーザーとの関係が時間とともに積み上がっていく「ストック型」の資産です。
フロー型は、止めれば消えます。ストック型は、蓄積が続く限り育ち続けます。
コミュニティが育ったとき、何が変わるか。
・仲間とつながる場があると、製品の使い方が自然と深まります。
・使い方が深まるほど、製品への愛着が増していきます。
・愛着が積み重なったユーザーは、他社製品には簡単に乗り換えません。
これが、コミュニティが生む参入障壁です。価格を下げることはできます。スペックを真似ることもできます。しかし、ユーザー同士が時間をかけて育てた関係性と、その中に積み上がった体験の記録は、競合にはつくれません。
もうひとつ見逃せないのが、コミュニティが開発のヒントを自然に集める場になる点です。ユーザーが語る使い方の工夫、感じた不便さ、撮れた感動、失敗談。それらは、次の製品設計の素材になります。リサーチ費用をかけて集めなくても、育ったコミュニティには、リアルな声が毎日自然に集まってきます。
「製品を届ける会社」と、「製品を通じた体験の場を持つ会社」。どちらが顧客の記憶に残り、選ばれ続けるか。
コミュニティは今日すぐに結果が出るものではありません。ただ、始めなければ、ストックは積み上がらない。その差は、今日から静かにつくられています。
ローカル鉄道が公式ファンコミュニティを作ると、何が変わるのか。
千葉県銚子市のローカル鉄道、銚子電気鉄道が「Fanicon(ファニコン)」にて公式ファンコミュニティ「銚電ふあんクラブ」をオープンしました。月額500円で入会でき、「銚電総選挙」など会員が参加できる企画も予定されていると、プレスリリースで案内されています。
大手に規模では勝てない。価格では太刀打ちできない。そういう事業にとって、コミュニティは経営の武器になります。
SNSのフォロワーとコミュニティの会員は、一見近いように見えて、関係の質がまったく異なります。
SNSへの発信はフロー型です。投稿がタイムラインを流れていく中で、アルゴリズムをくぐり抜けて届く必要があります。フォロワーが何人いても、次に投稿したとき覚えてもらっている保証はない。バズが起きても、次の話題が出れば流れていきます。「ファンが増えている」実感があっても、関係が深まっているかとは別の話です。
コミュニティはその逆、ストック型の関係を作ります。
一度入ってもらえれば、情報は届きます。企画があれば一緒に動けます。「銚電総選挙」のような参加型の仕組みは、ファンを受け手から担い手へと変えていく設計です。ファンが語り、体験を共有し、他の人を引き込む。このサイクルが生まれると、事業の推進力はファン自身から生まれるようになります。広告費では作れない動きです。
ここで生まれるのが、コピーできない関係性です。
競合がまったく同じ路線を走らせ、同じ価格設定をしても、「この鉄道が好きだから乗りに行く」という気持ちは模倣できません。コミュニティを通じてその気持ちが深まれば、競合との比較より先に「ここを選びたい」という感覚が来ます。これが、関係性が作り出す参入障壁です。規模が小さくても、資本が少なくても、ファンとの関係から作ることができる壁です。
継続的な関係はLTV(顧客生涯価値)にも直結します。一度コミュニティに入ったファンが企画に参加し、語り合い、体験を重ねるほど帰属意識が生まれます。「ここにいたい」という感覚は、離れる理由が減り続けることを意味します。次のキャンペーンが出るたびにゼロから動員を始める構造とは、まったく別の起点から事業が動くようになります。
こうした構造は、銚子電気鉄道に限りません。長年の顧客がいる事業、地域に根ざしたブランド、熱狂的に支持されているサービスは、すでにコミュニティの土台を持っています。その土台を、ただの顧客名簿として扱い続けるか。双方向の場に育てるか。
点のままか、資産に変えていくか。その差が、数年後の事業の厚みになっていきます。
芸能人のファンコミュニティ開設が、経営者に示すものとは。
俳優の舘ひろしが、オフィシャルファンコミュニティ「TACHI Members」を開設しました。ファンとの関係を、より深く、より継続的な形で受け止めようとする動きです。
芸能人のファンコミュニティというと、特殊な業界の話に聴こえるかもしれません。しかし経営の視点で構造を整理すると、一般のビジネスに重なる部分が多くあります。
SNSのフォロワーがいることと、そのフォロワーとつながっていることは、まったく別の話です。フォロワーへの発信はアルゴリズムをくぐり抜けて届く必要があります。何万人がフォローしていても、次に発信したとき覚えてもらっている保証はない。バズが起きても、次の話題が出れば流れていきます。ファンが「応援したい」という気持ちを持っていても、それを受け止める場がなければ、気持ちはどこにも向かいません。関係が「その瞬間の接触」で終わるのが、フロー型の本質的な限界です。
コミュニティはその逆、ストック型の関係を作ります。
会員として参加するということは、「継続的にここと関わる」という意思表示です。一度入ってもらえれば、情報は届きます。企画があれば動けます。長年ファンだった人が、コミュニティに入ることで能動的な担い手に変わる。その人が語ることで、新しい人が引き込まれる。ファンが自然と語り出す仕組みが生まれると、広告では買えない熱量の伝播が起きます。これが、コミュニティが持つ「自走する口コミ」の力です。
継続的な関係はLTVにも直結します。コミュニティの中でファンが価値を感じ続ければ、離れる理由が減ります。企画に参加し、語り合い、体験を共有するほど帰属意識が生まれます。「ここにいたい」という感覚が生まれるとき、競合との比較より先に「ここを選びたい」が来ます。それが、関係性が作り出す参入障壁であり、ファンがいる事業が持つ固有の強みです。
コピーできない関係性は、価格競争から距離を置く力を持ちます。
どんな業界でも、長く事業を続けてきた経営者には似たような資産があります。長年の顧客、根強い支持者、感謝してくれている人たち。その関係を、単なる顧客リストとして扱い続けるか。コミュニティという場で双方向に育てるか。
前者は、次のキャンペーンのたびにゼロから始めます。後者は、すでに積み上がった関係から始めます。その差が、数年後の事業の土台の違いになって現れます。
試作パートナーを探しているスタートアップと、技術を持て余している工場が、なぜ出会えないのでしょうか。
一般社団法人ベンチャーフレンドリープロジェクト(大田区、代表理事・田中宙氏)は2026年9月に設立され、スタートアップ・ベンチャーと、技術や知見でその挑戦を支えられる企業を結ぶ、会員制コミュニティとして動き出しました。2026年10月20日に概要が公開されています。
発表内容を並べます。
・挑戦する企業と支援できる企業を「可視化」によって結びつけることを目的とした会員制コミュニティ
・試作や開発のパートナーを探すことの難しさを解消するために設立
・参加対象は企業規模・事業年数・法人形態を問わない
ここからは、コミュニティ運営一般の話として書きます。
BtoBの事業でパートナーが見つからない理由は、価格でも距離でもないことがあります。存在を知らないか、信頼できるか分からないか、どちらかです。営業資料を送っても、この2つは解消しません。顔を見て、話を聞いて、初めて消えるものです。
コミュニティは、そのプロセスを仕組みにします。
・一度会った相手との次の連絡は早くなる
・自社の得意なことを話した相手が、適切な案件を持ってくる
・一人の紹介が、次の一人につながる
この連鎖は、広告では作れません。広告は届いた瞬間が最初で最後の接触です。コミュニティは、一度つながった関係が次の接触を呼びます。フローとストックの違いはここにあります。
BtoBでもう一点、見落とされがちなことがあります。
同じ立場の人が語ると、伝わり方が変わる。営業が言う「実績があります」は宣伝に聞こえます。同じ立場の会員が「あそこに頼んで良かった」と言うと情報に聞こえます。情報として伝わった言葉は、宣伝として伝わった言葉より遠くまで届きます。コミュニティには、この「第三者の言葉」が自然に生まれる構造があります。
そして、この信頼のネットワークは後から資本投下しても同じものは作れません。参加した時間の積み重ねが信頼の実体だからです。競合は同じ製品を作れます。同じ価格に合わせられます。しかし、共に課題を越えてきたメンバーのネットワークはコピーできません。
試作パートナーを「探す」仕事は、今日もコストがかかります。「見つかる場所」にいれば、そのコストは少しずつ下がります。
一度の商談で終わる点のままか。出会いが蓄積される場の資産にするか。数年後の差は、そこから始まります。
10年間で2,500本に迫る動画を届けてきたチャンネルが、次に始めたのはコンテンツではなく「場」でした。
株式会社講談社は2026年10月23日、教育系YouTubeチャンネル「ボンボンアカデミー」が、保育・教育ジャンルのクリエイターを対象とした「ボンボンアカデミー クリエイターズ サークル」を立ち上げると発表しました。
発表の内容を並べます。
・参加対象は、保育士、児童福祉士、幼稚園教諭、家庭で子育てをする保護者など、保育現場でさまざまな形で発信している人たち
・ボンボンアカデミーのスタッフが参加者を支援し、10年間で蓄積してきた動画制作のノウハウや素材を活用できると説明されています
・立ち上げを記念して、ボンボンアカデミーを含む全6チャンネルでコラボ動画が公開されました
ここからはコミュニティ運営一般の話として書きます。
YouTubeのチャンネル登録者数とコミュニティの参加者数は、同じ「人数」という単位でも、中身が違います。
・登録者は動画が届いている人
・参加者は場を通じて一緒に動く人
登録者は、面白い動画がなければ離れます。次のチャンネルに移ることに、特にコストはありません。コミュニティの参加者は違います。場で出会った人間関係があり、一緒に学んだ経験がある。その積み上がりが、離れる理由をなくします。LTVという言葉の中身は、たいていこの「離れにくさ」のことです。
コンテンツは、似たものを後から出せば追いつかれます。ノウハウも、時間と資金をかければ複製されます。しかしコミュニティで積み上がった関係性は、後からお金を払っても作れません。誰がどんな理由で集まったのか、どんな経緯でつながったのか。その経緯そのものが価値の中身だからです。
経営の目で見ると、もう一点があります。
コンテンツを配信する側は、受け手の反応を別の仕組みで聞く必要があります。コミュニティがあると、「これが難しかった」「こんな場面で使いたい」という声が自然に集まってきます。次に何を作るべきかの設計図が、外側から届くようになります。一方向の配信では得られないことです。
そしてコミュニティの参加者は、そこで得た体験を自分の言葉で外に話します。会社がお金を払って発信する言葉より、当事者が「あそこで学んだ」と話した一言のほうが、遠くまで届くことがあります。
コンテンツを発信し続けるだけにするか。受け取った人が一緒に動く場を持つか。
積み上がるものが、数年後の差になります。
ファンクラブの「器」を作るビジネスが、eスポーツ業界にも広がってきました。
2026年10月2日、推し活向けプラットフォーム事業を展開する株式会社アソビダスが、eスポーツチーム「REJECT」の公式ファンクラブ立ち上げを支援すると発表しました。アソビダスはファンクラブプラットフォームの提供に加え、運営サポートも担います。REJECTの公式ファンクラブは2026年10月3日(土)12時に提供開始となり、月額550円(税込)または年額6,050円(税込)で入会できます。
eスポーツチームがファンクラブを運営すること自体は以前からありましたが、今回の注目点はプラットフォーム提供だけでなく「運営サポート」まで含まれている点です。チームの本業はゲームや大会出演であり、ファンコミュニティの運営は専門知識を要する別の領域です。アソビダスのような推し活特化の企業が運営ノウハウごと提供することで、コンテンツホルダーがコミュニティ運営を外部委託しながらも質を保てるモデルが成り立ちます。
ファンクラブの設計として、REJECTは最初の「Ver.1.0」では所属VTuberのイベントチケット優先販売からスタートし、その後、格闘ゲームやFPSなど各コミュニティへ対象を広げる予定です。デジタル会員証が発行され、会員期間などに応じて「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」の4段階でランクが上がっていく仕組みも搭載されています。
これは、コミュニティ運営における「段階的な拡張」の好例です。最初から全機能を提供しようとせず、まず一部のファン層に向けてスモールスタートし、反応を見ながら機能を拡充していくアプローチは、運営リソースを効率的に使いながらコミュニティの熱量を高める方法として有効です。
ゲームやeスポーツのファンは熱量が高く、チームへの帰属意識も強い傾向があります。そのファン層に向けて、入会後の体験設計(ランク制度・限定コンテンツ・チケット優先購入)を丁寧に組むことで、継続率の高いコミュニティが育ちます。アソビダスとREJECTの取り組みは、他の業界にも応用できる運営モデルとして注目です。
(出典 PR TIMES 2026年10月2日)
タレントやアーティストが自分のコミュニティを持つ時代が、静かに変わり始めています。
2026年10月9日、シンガーでファイターとしても活躍するカウアン・オカモトさんの公式オンラインサロン「KAUAN SUPPORTERS CLUB」が、コミュニティプラットフォーム「fan.salon」にて始動しました。運営を担うのは株式会社Badgeで、メンバー限定コンテンツの配信やファンとのコミュニケーション機能を提供します。このサロンは、X(旧Twitter)やInstagramなど誰でも閲覧できるオープンなSNSでは提供されない情報や体験を、会員向けに届けることを目的としています。
ファンコミュニティの価値が注目されるようになった背景には、SNSが抱える構造的な課題があります。現在、SNSには毎日膨大な量のコンテンツが投稿されており、フォロワーが多い人気アカウントの投稿であっても、アルゴリズムによって表示が制限されることは珍しくありません。せっかく新しいコンテンツを投稿しても、すべてのフォロワーに届くわけではないのが現実です。こうした状況のなかで、「自分が本当に届けたい相手に、確実にコンテンツを届ける手段」として、クローズドなコミュニティの価値が再評価されています。
有料のメンバーシップ型コミュニティには、もうひとつの強みがあります。それは、参加者の熱量が高いという点です。無料で誰でも見られるSNSとは異なり、費用を払って参加するということは、その人が本当にそのアーティストやコンテンツに価値を感じている証明でもあります。運営者にとっては、熱量の高いコアなファンと直接つながれる場が手に入り、ファンにとっては「選ばれた体験」を楽しめる場が生まれるという、双方にとって意義のある関係性が形成されます。
コミュニティ運営で長期的な成果を出すためには、いくつかの要素が欠かせません。まず、限定コンテンツの質と継続的な更新です。参加直後の熱量が高いタイミングを逃さず、定期的に価値ある情報を届けることが重要です。次に、ファン同士が交流できる仕組みです。運営側からの一方的な情報提供だけでなく、会員が互いにつながり、コミュニティとしての一体感を醸成できる設計が求められます。そして、参加していることへの「プライド」を感じさせる工夫です。たとえばデジタル会員証や限定バッジ、ランク制度などは、ファンのモチベーション維持に効果的です。
「KAUAN SUPPORTERS CLUB」の始動は、エンタメとコミュニティが融合していく2026年という時代の象徴的な一事例です。今後、同様のクローズドコミュニティを立ち上げるアーティストや著名人はさらに増えていくことが予想されます。コミュニティ運営に携わるすべての人にとって、このような実例は参考になるでしょう。
(出典 PR TIMES 2026年10月9日)
eスポーツチームがファンクラブを作る意味は、チケットを売ることだけではありません。
株式会社REJECTが、公式ファンクラブを2026年10月にリリースしました。月額550円(税込)、または年額6,050円(税込)で入会できます。まずはREJECT所属VTuberが出演するイベントのチケット優先販売から運用を始め、今後は格闘ゲーム・FPS・モバイルタイトル・ストリーマーなど各カテゴリのコミュニティへと展開していく計画です。
サブスクリプション型のファンクラブが持つ意味は、収益モデルだけではありません。
SNSのフォロワーは数百万いても、投稿を見ているかどうかさえわかりません。でもサブスクリプションで入会しているファンは、毎月継続を選択しています。その意思決定が、コミュニティ側にとっては貴重なシグナルです。ファンが何に反応し、どんなコンテンツを楽しみ、どのくらいの熱量を持っているか。そのデータが蓄積されることで、次の打ち手の精度が上がっていきます。
・SNSのフォロワーはそこにいるだけ
・会員は毎月、継続を選んでいる
・その差が、ファンのリアルな熱量を映し出す
REJECTの発表で注目したいのは、「Ver.1.0」という表記です。チケットの優先販売から始め、段階的にデジタル会員証や会員限定タイムラインなどの機能を拡充していく計画です。最初から全ての機能を揃えるのではなく、段階的に展開していく設計です。
コミュニティ運営において大事なのは、「どう完璧に設計するか」ではなく「どう積み上げるか」でもあります。
最初から全てを揃えるよりも、小さく始めてファンの反応を見ながら育てていく方が、最終的には深みのあるコミュニティになりやすい。メンバーが「一緒に育ててきた」という感覚を持つことで、離れにくさが生まれます。
eスポーツ業界のファンクラブは、熱量が極めて高い領域です。他の業種でもコミュニティを運営する企業が増えていますが、eスポーツほどファンの熱量を直接可視化できる文化を持つ業界は多くありません。逆に言えば、このようなファンクラブから学べる「熱量の扱い方」は、他の業種にも応用できます。
熱量のあるファンは、最高の口コミ発信者でもあります。体験を語り、仲間を呼んでくる。そのサイクルが回ったとき、広告費をかけずにコミュニティが育ち始めます。
一回のイベントで終わるのか、継続する関係性を積み上げるのか。その選択が、数年後のファン基盤の厚さを決めていきます。
経営の壁にぶつかったとき、誰に相談しますか。
「参謀BAR」を運営する株式会社経営参謀が、月額会員制度「参謀BARクラブ」を10月8日に始動しました。1,000名超の参謀ネットワークを活用し、悩みに合う専門家を紹介する仕組みです。
コミュニティの強みは、関係性がストックされていく点にあります。
広告やSNSで集めた見込み客は、情報を届けたその瞬間には存在しますが、次の瞬間には去っていきます。対してコミュニティに参加した人は、組織の中に留まります。問いを持ち続け、つながりを深め、やがて熱量のある支持者になっていきます。
今回の事例で特徴的なのは、「悩みに合う人を紹介する」という設計です。1,000名超という規模のネットワークがあれば、同じ課題を乗り越えた先輩経営者と引き合わせることができます。参加者が単に情報を受け取るだけでなく、「誰と会えるか」を軸に組まれた仕組みです。
コミュニティが資産になるかどうかは、中に何があるかで決まります。
情報だけが並ぶコミュニティは、もっとよい情報が出れば乗り換えられます。でも人と関係性があるコミュニティは、離れにくい。参加した理由より、残っている理由のほうが強くなっていくからです。
・フロー型(SNS・広告)は露出した瞬間に消えていく
・コミュニティはつながりがストックされ続ける
・参加者が紹介者に変わったとき、資産として機能し始める
月額という仕組みも示唆的です。単発の購入や問い合わせではなく、継続的な関係を積み上げる構造になっています。継続の積み重ねがデータになり、次の改善につながり、より精度の高いマッチングを生んでいきます。
コミュニティを持つということは、顧客との継続的な対話チャンネルを自社の中に持つということでもあります。
「点」の出会いを、関係性という「線」に変えていく。その積み重ねが、数年後には他社には模倣できない経営資産になっていきます。経営者コミュニティが成立するのは、悩みが共有されるからです。同じ問いを持つ人が集まるほど、一人では解けなかった課題が動き始めます。
「参謀」という言葉が示唆的です。参謀とは、作戦を立てる側の人間です。戦場に出る指揮官ではなく、最善手を考え続ける存在。経営者が参謀を必要とするのは、独りで判断し続けることに限界があるからです。1,000名超のネットワークを持つコミュニティは、その参謀集団を可視化したものとも言えます。
一人の力には限界がある。でもコミュニティには、複数の人の知恵が詰まっている。その差が、時間の経過とともに経営の差になっていきます。
「誰もがコミュニティを持てる」時代に、経営者は何を見るべきか。
Q&Aサービス「OKWAVE」が、2026年9月25日よりコミュニティ作成・運営機能を一般開放しました。電話番号認証を完了したユーザーであれば、誰でも自分でテーマを決めてコミュニティを立ち上げられます。地元の情報を交換したい人、共通の趣味を持つ仲間と語り合いたい人、専門知識を共有したい人。それぞれが自分の場を持てる環境が、プラットフォームの側から整えられました。
これまでは運営や企業向けに提供していた機能で、今回の一般開放によりユーザー自身が管理者となってコミュニティを開設し、メンバーを集めることができるようになっています。
コミュニティを「作ること」のコストは、この数年で大きく変わりました。
以前は、独自のプラットフォームを構築したり、専任の運営チームを整えたりすることが前提でした。いまは、主要なサービスの上でコミュニティを立ち上げることが身近になっています。企業も、個人も、「場を持つこと」自体の敷居は下がり続けています。その流れは、今後もさらに加速していくでしょう。
そのなかで、経営者が本当に考えなければならないことは何でしょうか。
場を持つことと、場に人が集まり続けることは別の話です。登録者はいるが誰も投稿しない。イベントはあるが日常のつながりが生まれない。そういう場は、やがて静かになります。場を維持するコストだけがかかり、手応えが見えない状態が続く。それが、コミュニティの立ち上げに失敗したと感じる企業の多くが経験してきたことです。
熱量のある場は違います。メンバーが互いの投稿を楽しみにして、自発的に語りかける。その言葉が場を動かし、新しい参加者の輪を生んでいく。そこには、運営者が大きな仕掛けをしなくても、自然と循環が生まれます。
コミュニティが「誰でも作れる」ものになったいま、何がその場の価値を決めるのかは以前より明確です。
・SNSへの投稿は流れていくが、コミュニティの会話は積み重なっていく。
・広告の効果は出稿をやめると消えるが、関係性はつながり続けるほど深まる。
・バズは再現が難しいが、熱量のある場はそれ自体が紹介の起点になる。
コミュニティを「点」として持つか、経営の「資産」として育てていくか。その問いへの向き合い方が、数年後の顧客との距離を決めていきます。作るコストがほぼゼロに近づくなか、残る差は「続ける意志」と「深める設計」だけかもしれません。
トミカを売ってきた会社が、今度は「集まる場所」を開きます。売り物ではなく、無料で。
タカラトミーが2026年10月5日、「トミカ」の初の公式ファンコミュニティサイト「TOMICA OWNER'S CLUB」を開設します。会員登録費・基本利用料は無料。コンセプトは「みんながエンジン」で、トミカオーナーの情熱そのものを場の原動力にするという設計です。
用意されるコンテンツは4つです。
・トミカオーナー同士が自由に交流する「オーナーズトーク」
・テーマに応じた写真や体験を投稿し、いいねやコメントで共感を生む「トミカポスト」
・新商品情報や開発秘話などブランドの内側を届ける「トミカタイムズ」
・活動に応じてポイントが貯まり特典獲得やランクアップができる「オーナーズポイント」
2026年12月には東京と大阪の2会場でリアルイベント「TOMICA OWNERS MEETING」の開催も予定されています。
ここからは、コミュニティ一般の話に移ります。
モノを販売する会社が「売り場」とは別に「集まる場所」を持つとき、何が動き始めるのでしょうか。
広告は認知を広げます。ただし出稿を止めれば流れも止まります。キャンペーンを打てば数字は動きますが、終われば消えます。このサイクルを回し続ける限り、毎回同じコストが発生し続けます。
コミュニティは違います。
・一度集まった人は、次もその場に戻ってきます
・場に愛着が生まれた人は、次の購入でも同じブランドを選びやすくなります
・場に集まる人同士がつながると、企業が動かなくても場が回り続けます
止めても消えない。これが広告との根本的な違いです。
コミュニティで積み上がるものは他社に複製できません。価格は真似されます。機能は追いつかれます。しかし「あの仲間と語り合った体験」は、いくら資金を積んでも再現できません。関係性は唯一複製不可能な参入障壁です。価格だけで比べられる状態から抜け出せるかどうかは、ここで変わります。
熱量を持ったファンは放っておいても語り出します。「この商品がこう好きだ」「こんな楽しみ方をしている」という声は、誰に頼まれるわけでもなく広がります。その声は企業の広告とは違う信頼で届きます。広告費では買えない種類の拡がりです。
さらに、集まる声は次の開発ヒントにもなります。使っている当事者の言葉には、外部調査では出てこない本音があります。何が好きで、何が欲しいのか。コミュニティに集まるリアルな声が、次の商品の手がかりになります。
購入は一度きりの点で終わることもあります。コミュニティに残った人は、そのブランドと長期的な関係を続けます。この差が、数年後の事業の厚みに現れます。
点で終わらせるか、関係として積み上げるか。始めた一手の意味は今日ではなく、数年後に明らかになります。
自動車メーカーがコミュニティを作る理由は、クルマを売るためだけではないかもしれない。
スズキ株式会社が2026年9月28日、スズキ車のオーナーやファン向けの公式コミュニティサイト「スズキヴィレッジ」を公開しました。コンセプトは「スズキとつながる、スズキでつながる」。
サイトでは、愛車の紹介やおすすめドライブスポットの共有、車種別のトークルームでの交流ができます。まずはハスラーとスペーシアの2車種から始まり、順次展開される予定です。ログインや投稿、コメントなど日々のアクションに応じてポイントが貯まりランクアップする仕組みも導入されており、将来的にはランク達成者へのノベルティ提供やイベント招待なども検討されています。
ここで少し立ち止まって、大手メーカーがこうした「自社コミュニティ」を作るとき、何が起きているのかを考えてみます。
広告は打てば届く。SNSでバズれば一瞬で拡散される。でも届いた人は翌日には別のものを見ています。コミュニティは違います。オーナー同士が「うちのハスラーでここまで行ってきた」「このドライブスポットは最高だった」と語り合う場は、企業が何もしなくても毎日動き続けます。
これが広告(フロー)とコミュニティ(ストック)の本質的な違いです。
・広告は止めれば消える
・コミュニティは止めても動き続ける
さらに重要なのは、コミュニティで積み上がるものが「関係性」だということです。同じクルマを愛するオーナーが集まり、そこで生まれた体験や感情は、他社には真似できません。価格でも機能でも再現できない、感情的なつながりが競争優位になります。
商品に満足しただけのユーザーは離れれば戻らないかもしれない。でも、コミュニティで仲間と出会い、思い出を積み上げたユーザーは、次のクルマを選ぶときも同じブランドに戻ってくる可能性が高くなります。LTV(顧客生涯価値)の観点から見れば、コミュニティはマーケティング手法ではなく、事業の基盤になり得るものです。
ランク制度や特典の仕組みも、単なる特典ではありません。参加を続けるほどブランドとの絆が深まり、自分から熱量を持って語り出す顧客が自然に増えていく。そのようなファンが生まれると、企業の声ではなく生活者の声でブランドが広がります。これは広告費では買えない資産です。
コミュニティで蓄積されたオーナーの声は、商品開発やサービス改善のヒントにもなります。どんなドライブスポットが人気か、どんな悩みを抱えているか。コミュニティが自然とそれを教えてくれる場になります。
広告費で集めた顧客と、コミュニティで育てた顧客。数年後、その差は思っている以上に大きくなっているかもしれない。
会員証を持っていることで、初めてその場に立てる。そういう設計がファンクラブへの帰属感をどこまで育てるかを、考えさせられます。
B.LEAGUE PREMIERに所属するプロバスケットボールクラブ・シーホース三河は、2026年11月29日(日)に三井ショッピングパーク ららぽーと安城にて「クレディセゾン presents シーホース三河 ファンミーティング in ららぽーと安城」を開催します。
参加対象は公式ファンクラブ「MIKAWARIUM supported by クレディセゾン」の会員で、抽選で140名がステージ前の観覧指定席へ招待されます。当日はシーホース三河所属選手によるトークショーを中心に、ファン向けの企画が実施される予定です。応募期間は2026年9月28日(月)12時から10月9日(金)23時59分まで。
この設計で目を引くのは、舞台を「ショッピングモール」に設定した点です。
試合会場のアリーナは、チームへの関心がある人が選んで行く場所です。対して、ショッピングモールは日常の用事で訪れる場所です。その日常の場所に選手が立ち、ファンクラブ会員がステージ前に集まる光景は、普段バスケットボールを観ない人の目にも入ります。ファンクラブの存在が、アリーナの外でも可視化される機会です。そして、その席に座れるのはMIKAWARIUMの会員だけです。
ファンクラブ会員であることの価値が「試合チケットの割引」「優先入場」だけで伝わる時代は変わりつつあります。「この日、この場所に行けたのは会員だから」という体験が、会員であり続ける理由として機能します。1シーズンごとに更新が必要な会員制において、「また来シーズンも会員でいたい」と思える感情は、コンテンツではなく体験の記憶から生まれます。スポーツクラブにとって、シーズンをまたいで会員が継続するかどうかは、クラブの基盤を支える数値です。試合の勝敗とは別の文脈で、会員がクラブとつながっている実感を持てる場が、その継続に関わっています。
クレディセゾンがネーミングライツスポンサーとしてファンクラブ名に名前を添える構造は、チームとパートナーが共同でファンへの価値提供を設計している形です。スポンサーシップの接点がメディア露出だけにとどまらず、会員限定イベントの実施に組み込まれています。
ファンクラブ会員だけが入れる場を、日常の場所につくる。そのたった一度の接点が、1人のファンの「来シーズンも応援し続ける理由」になっていきます。
製品を使い込んでいるからこそ、開発者に直接聞きたいことがある。そういう熱量が集まる場は、設計次第でまったく違う密度になります。
株式会社シグマは2026年10月24日(土)、神奈川県川崎市の本社にて「Sigmaファンイベント」を開催します。参加対象はシグマ製のカメラまたは交換レンズを所有するユーザーで、参加費は無料。専用フォームへの申し込みが必要で、その際に所有製品の入力が応募条件となっています。募集人数は約200名で、事前応募による抽選制。申し込みの締め切りは2026年10月9日(金)17時です。
当日は13時から開場し、13時30分よりオープニングプレゼンテーションがスタート。実機を手に取って撮影を試せる「タッチ&トライ」、歴代製品の展示、そして開発スタッフとのトーク・交流タイムの3つが主なコンテンツです。終了は18時を予定しています。
この設計には3つの特徴があります。
ひとつ目は「本社に招く」という選択です。製品体験やトークイベントは、都市部のショールームや展示会場でも実施できます。それをあえて製品が生まれる川崎の本社で行うことで、参加者は「メーカーの現場に迎え入れられた」という体験を持ち帰ります。歴代製品の展示も、本社という文脈があることで意味が変わります。「ここで生まれた製品の歴史」として見ることと、「ショールームに置かれた展示品」として見ることは、同じ行為でも体験の重さが違います。
ふたつ目は「開発スタッフとのトーク・交流タイム」という構成です。広報や営業担当ではなく、製品を実際に作った人と話せる場は、カメラやレンズに深い関心を持つ人にとって、他では得られない機会です。SNSやレビューサイトには残らないけれど、参加者の記憶に長く刻まれるやりとりが生まれやすい設計です。
みっつ目は「所有製品の入力を応募条件にする」仕掛けです。参加者を同じ文脈を持つ人に揃えることで、開発スタッフとの対話も、参加者同士の交流も、より密度の高いものになります。
参加費ゼロで約200名という規模でありながら、手間のかかった応募設計を維持しているのは、この場で生まれる関係の質を保つためです。製品を愛している人と、製品を作っている人が直接つながる経験は、どこにもコピーできないものです。ファンイベントに参加した人は、その体験を誰かに話したくなります。それがブランドのメッセージを、広告では届かない距離まで運んでいきます。
本社を開いてファンを迎え入れる。その1日が、参加者をブランドにとって最も大切な伝え手へと変えていきます。
「誰でも歓迎」の場と「この人だけ」の場では、集まる温度がまったく違います。
2026年9月26日、Linkmate株式会社が「Linkmate(リンクメイト)」というサービスを開始しました。既婚者(20歳以上)を対象とした限定コミュニティです。「同じ立場の人が互いに支え合い、結婚後の人生を乗り越え、世界を広げる」というコンセプトで運営されます。
掲示板・ブログは無料で利用でき、友達申請やサークル活動は月額500円のサブスクリプションで使える形になっています。異性間の1対1のダイレクトメッセージは禁止されており、会員主催のオフ会は3名以上・事前承認が必要とされています。
ここからは、コミュニティ設計一般の話として続けます。
「絞る」という選択は、数を捨てているようで、別の何かを手に入れる動きです。
誰でも入れる場所には、誰でも入ってきます。広さの強みはありますが、特定のだれかに向けた深い話はしづらくなります。「自分のことをわかってくれる人がいる」という感覚は生まれにくく、滞在時間は短く、離脱も早い。毎月人を集め直す構造から抜け出せません。
メンバーを絞ると、最初のハードルは上がります。ただ、入った人同士の距離は縮まります。
・同じ立場にある、という共通点が最初の橋になります
・話しかける理由が最初からあるので、会話のコストが下がります
・場に残り続ける動機が、「なんとなく」ではなく「ここだから」になります
この変化は、広告では買えません。
広告やバズで人を集めることはできます。ただ、集まった人が翌週もそこにいるかどうかは、また別の話です。止めれば止まるのがフローです。場に蓄積される関係性は、続けるほど翌月も残ります。ストックです。同じ予算を使うとして、一回の露出に払うのか、来年も残る関係に払うのかで、数年後の手元はまったく変わります。
絞った場には、競合も入りにくい。サービスの機能は真似されます。価格も下げられます。ただ「あの場のメンバーたちとのつながり」は後から複製できません。設計だけでなく、そこで積み上がった時間と関係そのものが、参入障壁になります。
場が動き始めると、情報の入り方も変わります。何に不満を持っているのか、どんな機能があれば続けたいのか。アンケートでは届かない粒度の声が、会話の中から自然に入ってきます。次に何をすべきかのヒントが、外に頼まず手に入る状態になります。
月額500円という金額は、小さいようで役割を持っています。払うことで、その場に対するコミットが生まれます。無料で集めて広告で稼ぐ構造とは、ユーザーとの関係の作り方がそもそも違います。
数で広げることと、深さで関係をつくること。コミュニティを設計するとき、この問いを最初に置けるかどうかで、3年後に手元に残るものが変わります。
新商品のアイデアが、社外から70案以上集まる。そんな会社があります。
カルビー株式会社が9月17日、『じゃがりこ プルコギ味』を発表しました。9月28日から、全国のコンビニエンスストアで数量限定発売されます。
ファンコミュニティ「じゃがりこ探検隊」との共創企画、その第2弾です。
・味の候補は、コミュニティのメンバーから70案以上が寄せられた
・その中で最も支持を集めたのが、プルコギ味だった
・2回の試食イベントを行い、参加者の意見をもとに味を詰めた
・パッケージデザインもコミュニティでの投票で決まり、韓国のネオン看板をイメージしたものになった
・ファンサイトは2026年9月1日に移行し、現在はメンバーが「じゃがりこじま」を通じて参加している
ここからは、コミュニティ一般の話です。
会社が大きくなるほど、顧客の声は遠ざかります。
・調査会社に頼む
・アンケートを配る
・SNSでエゴサーチをする
どれも声は集まります。ただ、集まるのは「感想」です。買った人が、買ったあとに言うこと。その情報で決められるのは、次に何を直すかまでで、次に何をつくるかではありません。
コミュニティでは、順番が逆になります。商品が存在する前に「こういうものが欲しい」が先に出てくる。70案という数字は、調査予算が生んだ数ではなく、日々の関係が生んだ数です。
これがストックになる、というのはこういうことです。
広告は出した瞬間が最大で、あとは減っていきます。フローだからです。コミュニティは、1年運営すれば1年分の会話が溜まる。2年運営すれば2年分溜まる。減りません。去年もらった案が、来年の商品になることもある。
そして、ここから生まれた商品には、最初から語り手がついています。
案を出した人、試食に行った人、投票した人。その人たちにとって、それは「新商品」ではなく「自分たちの商品」です。発売日に動く熱量が、広告費とは別のところから出てくる。
さらに、この部分だけは調べられません。
味は分析できます。原材料も、価格も、売り場も、売れ行きも調べられる。調べようがないのは、70案を出した人たちと会社のあいだに積み上がってきた時間です。ここはお金で買えないし、買収もできないし、コピーもできない。
新商品を"点"として出し続けるか、声が先に集まる"場"を持つか。5年後に効いてくるのは、商品の数ではなく、つくる前に相談できる相手がいるかどうかです。
次に出す商品が売れるかどうか、発売前に知る方法はあるのでしょうか。
VALX株式会社が9月17日、「VALX ホエイプロテイン とろけるバニラアイス風味」を数量限定で復刻しました。600g、5,479円(税込)です。
この味が棚に戻るまでの経緯が、プレスリリースに書かれています。
・毎週のInstagram配信「VALX "FUN" LIVE!」でファンからフレーバー案を募った
・バニラの要望が多く、商品化へ進んだ
・ファンとの開発会議で「もう少しバニラの香りを感じられるように」「より卵のコクを感じる味わいに」といった率直な意見が寄せられ、味を詰めた
・2026年2月25日から3月12日に行われた「VALXフレーバー総選挙」で、「VALX "FUN" コミュニティ」登録者が1アカウント1票で投票し、この味が1位になった
ここから先は、コミュニティ一般の話として書きます。
新商品を出すとき、経営者が最後まで消せない不安はひとつです。売れるかどうかが、出してみるまでわからない。
広告は、この不安を消してくれません。広告はフローだからです。出稿すれば数字は動き、止めれば戻る。しかも「出したけれど売れなかった」という答えは、お金を使い切ったあとにしか返ってきません。
コミュニティはストックです。日々の会話が溜まっていき、次に何をつくればいいかのヒントが、つくる前に集まる。
・何が足りていないのか
・どこを直せば買われるのか
・そもそも、どれくらいの人が欲しがっているのか
この3つが、開発に入る前にわかる。投票という形をとれば、需要の大きさは数字で見えます。市場調査を外注して得るのと同じ情報が、関係性の副産物として出てくるわけです。
もうひとつあります。関わった人は、買います。
自分が案を出し、自分が票を入れた商品は、他人がつくったものではありません。発売日に手に取る理由が、宣伝ではなく当事者意識から生まれる。そして自分が関わったものは、黙っていられません。語られ方が、広告とはまったく違う経路を通ります。
さらに言えば、この関係はコピーできません。
味は真似できます。パッケージも、価格も、広告表現も真似できる。真似できないのは、その商品を「自分たちで決めた」と思っている人たちが存在している、という事実だけです。ここが、価格競争から抜け出すための参入障壁になります。
広告は、出した分だけ効きます。コミュニティは、やめない限り積み上がります。
ひとつの発売を"点"で終わらせるか、次の商品の材料が集まり続ける"場"に変えるか。数年後に差がつくのは、出した商品の数ではなく、聞ける相手の数のほうです。
65万人以上が登録するサービスを持つ会社が、次に用意したのは月額制のコミュニティでした。すでにつながっている相手に、あらためて会費を払って入ってもらう場所です。ここに、経営の打ち手としてのコミュニティの性格がよく出ています。
株式会社ミライロが2026年9月17日、オンラインコミュニティ「&ミライロ」を開設しました。
・参加できるのは、障害のある人、その家族、障害者の活躍を応援する人
・「ミライロID」と連携し、その登録者は2026年8月末時点で65万人以上
・月額は30歳未満が1,000円、30歳以上が1,500円、家族や応援者などのサポーターが2,000円
・一般募集は9月24日から
・国内で障害のある人はおよそ10人に1人、約9.3%だと紹介されています
障害のある人が集い、日々の気づきや「やってみたい」を形にしていく場で、当事者の声を企業との共創につなげると説明されています。
ここからは一般論です。
多くの会社は、顧客との接点を数で持っています。会員登録、アプリのインストール、メールの配信先。数は増えますが、向きは一方通行です。こちらからは届く。けれど、返ってはきません。
コミュニティが違うのは、向きが両方になることです。
・何に困っているかが、聞く前に流れてくる
・商品の改善点が、クレームではなく提案として上がってくる
・良いと思った人が、頼まれなくても周りに伝える
単発のアンケートで集まるのは、こちらが質問した範囲の答えだけです。続いている場に集まるのは、質問を思いつきもしなかったことのほうです。商品の次の一手は、たいてい後者から出てきます。
もうひとつ。人は、自分がお金と時間を使った場所に愛着を持ちます。無料で登録しただけの相手と、会費を払って参加している相手とでは、同じ質問をしても返ってくる言葉の密度が変わります。会費は、その場を「自分たちのもの」にするための仕掛けにもなります。
そして関係が続いている相手は、良かったことを自分の言葉で周りに話します。広告では、この語り口までは買えません。
広告は出稿をやめた瞬間に消えます。キャンペーンは終われば終わりです。どちらもフローで、使うたびに減っていきます。人と人の関係だけは積み上がります。そして他社がどれだけ予算を積んでも、自社とその人たちの間に流れた時間は買えません。価格競争から抜け出す出口は、たいていここにあります。
自社のまわりにいる人たちを、登録者数という"点"のまま置いておくのか、年々厚くなる"資産"に変えるのか。数年後、その差は売上の大小より先に、離れていかないという形で現れます。


