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はじめての方へ。
研究者としてキャリアを始め、バイオインフォマティクスの会社を起業しました。17年になります。
いまは、ライフサイエンス×AIを事業にする仕事と、いろいろな業界の経営者や、挑戦する人と話すことに、いちばん時間を使っています。
ここでは3つのことを書いています。
・解析の道具とデータの早見(朝)
・技術を事業にするときの学び(昼)
・異業種の経営者との対話から気づいたこと
技術を事業にしたい人、新しい挑戦を始めたい人とつながれたらうれしいです。
【保存版】GWASのサマリー統計、どこから取るか早見。
・まず探す窓口:GWAS Catalog(サマリー統計の全文が置かれた研究だけを絞り込める。GCST の番号で引く)
・取ってすぐ解析に使う:IEU OpenGWAS(R の ieugwasr や TwoSampleMR から直接引ける)
・UK Biobank の形質をまとめて:Pan-UK Biobank(祖先集団ごとの結果もある)
・フィンランドのバイオバンク:FinnGen(データフリーズごとに公開)
・日本人:バイオバンク・ジャパンの結果は、理研IMSのデータベースと NBDC ヒトデータベース(hum0014)から
・精神疾患:PGC(Psychiatric Genomics Consortium)
・身長・BMI などの体格:GIANT
・形質どうしの遺伝的な相関を見渡す:GWAS Atlas
取ってきたら、まずゲノムの版(GRCh37か38か)と、効果アレルがどの列かを確かめる。ここを取り違えると、符号が逆のまま解析が進む。保存推奨。
今週から、ここでの発信を少し広げます。
これまでは、解析の道具やデータの早見を中心に書いてきました。保存してくれる人も、質問をくれる人も増えて、本当にありがたいです。
一方で、自分がいちばん楽しいのは、いろいろな業界の経営者や、挑戦している人と話しているときだと気づきました。
研究者から起業して17年。
技術を事業にするときの学びや、人との対話から気づいたことも、書いていきます。
道具の早見は、これからも朝に続けます。
科学技術と経営をつなぐ。
そんな発信にしていきたいです。
【保存版】単一細胞RNA-seqから、コピー数の変化を推定する道具早見。
・定番:inferCNV(正常な細胞を参照にして、染色体の区間ごとの発現の偏りを見る)
・Python から:infercnvpy(Scanpy の AnnData のまま回せる)
・参照の細胞がなくても:CopyKAT(がん細胞と正常細胞の見分けもする)
・アレルの情報も使う:Numbat(SNPのアレルの比を足して、サブクローンの系統まで推定)
・速く、大規模に:SCEVAN
・空間データで:CalicoST(空間トランスクリプトームで、アレルごとのコピー数と腫瘍の広がりを推定)
発現から推定したコピー数は、あくまで間接的な証拠。拾えるのは、染色体の腕レベルの大きな変化まで。細かい増幅は、DNAのデータで確かめる。保存推奨。
【保存版】論文とプレプリントを追いかける道具早見。
・新着の通知:PubMed のメールアラート(検索式を保存しておく)
・プレプリント:bioRxiv・medRxiv(分野ごとの新着)
・本文と補足資料まで検索:Europe PMC(APIもある)
・引用のつながりをたどる:Semantic Scholar/Connected Papers
・文献の管理:Zotero(無料。ブラウザから取り込める)
・論文のコードとデータ:本文の Code availability から GitHub・Zenodo をたどる
・公開後の指摘:PubPeer(コメントを確認する)
新着を全部読むのは無理。検索式を1つに絞って、週1回だけ見る。保存推奨。
今週、実務で引けるようになったもの(10/12〜10/18)。
・SPLENDID:祖先集団で分けずに、1つのモデルでポリジェニックスコアを作る
・tangermeme:配列の深層学習モデルを、手元で解釈と設計に使う
・摂動予測のベンチマーク:差を拾える指標で、モデルを比べ直す
・VIMA:空間データの症例と対照の差を、細胞型を決めずに探す
今週の早見:公共のエピゲノムデータ、どこから取るか/Perturb-seq 解析/病原体のゲノム疫学
来週も、明日使えるものだけを。保存推奨。
質量分析のタンパク質定量は、欠損値の扱い方ひとつで、有意に出るタンパク質の数が大きく変わる。
【保存版】質量分析プロテオミクス、定量の道具早見。
・DIAの定量:DIA-NN(速くて定番)
・DDA・DIA・TMTをまとめて:FragPipe(MSFragger)/MaxQuant
・タンパク質の量を推定する:MaxLFQ(MaxQuant・DIA-NN・FragPipe に実装)
・統計:MSstats/limma/DEqMS(ペプチドの数で分散を補正)
・欠損値の補完:imputeLCMD(「測れなかった」と「無い」を分けて補う)
・品質の点検:PTXQC(MaxQuant の結果を自動でレポート)
・データの公開と入手:PRIDE(ProteomeXchange)
同定数を増やす設定は、偽陽性も増やす。FDRの基準をそろえてから、手法やツールを比べる。保存推奨。
【保存版】単一細胞ATACで、ピークを呼んだあとにやること早見。
・モチーフの活性を細胞ごとに:chromVAR
・ピークと遺伝子をつなぐ:ArchR の peak-to-gene/Cicero(共アクセシビリティ)
・制御ネットワークまで組む:SCENIC+/FigR
・配列から読み解く:scBasset(ピークの開き方を配列で学習)
・差のあるピーク:疑似バルクにして DESeq2
・RNAと同時に測ったデータ:Signac の LinkPeaks/MultiVI
・GWASの変異と重ねる:gchromVAR/S-LDSC(細胞型ごとの遺伝率の濃縮)
単一細胞ATACは1細胞あたりの情報が少ない。細胞ごとの結論ではなく、集団としての傾向として読む。保存推奨。
空間データで、症例と対照の差を「細胞型を決めずに」探せるようになった——VIMAが公開され、GitHubから使える。
多くの比較では、まず細胞を切り出して細胞型やニッチに分け、その割合を比べる。分け方が粗いと差が埋もれ、細かすぎると検体ごとのクセに引きずられる。
VIMAは、組織を小さなパッチに分けて深層学習で特徴をつくり、似たパッチの集まりが症例と対照で増減しているかを検定する。関節リウマチ・潰瘍性大腸炎・認知症の空間データで差を検出し、一部では他の手法が見つけられなかった差を、偽陽性を抑えたまま拾ったとある。
ただしGPUがほぼ前提で、パッチの大きさによって拾う信号が変わる。見つかった領域が何なのかは、あとから人が読み解く必要がある。
【保存版】多重染色・空間プロテオミクス画像の解析道具早見。
・取り込みから発現表まで一気通貫:MCMICRO(Nextflow)
・イメージングマスサイトメトリー:steinbock → imcRtools(R)
・細胞の切り出し:Mesmer(DeepCell)/Cellpose
・目で見て確かめる:QuPath/napari
・細胞ごとの発現量を出す:MCQuant(MCMICRO の一部)
・空間の解析:SCIMAP(近傍・空間の相関)/imcRtools
・大きな画像をウェブで見せる:Minerva
・画像の形式:OME-TIFF(顕微鏡画像の標準)
空間の解析は、細胞の切り出しの誤差をそのまま引き継ぐ。隣の細胞のシグナルが混ざっていないか、画像で確かめてから次へ進む。保存推奨。
「深層学習の摂動予測モデルは、単純な基準に勝てない」という見方に、評価指標の側から反論が出た——ベンチマークのコードが公開されている。
遺伝子を壊したときの発現の変化を予測するモデル(scGPT・GEARS など9種)を、14の摂動データで評価し直した。よく使われる平均二乗誤差や相関は、効果の弱い摂動が多いデータでは、良い予測と「平均を返すだけ」の予測をほとんど区別できない。
そこで著者らは、各指標が本物の差をどれだけ拾えるかを測ったうえで比べた。差を拾える指標で見ると、多くのモデルが単純な基準を上回った。
ただし評価したのは、見たことのない遺伝子の摂動と、遺伝子の組み合わせまで。新しい細胞種や条件への予測は対象外。自分で比べるときも、指標は1つで決めない。
Perturb-seq では、ガイドが入っていても、標的の遺伝子が下がっていない細胞が一定の割合で混ざる。
【保存版】単一細胞の摂動データ(Perturb-seq)解析の道具早見。
・まとめて回す枠組み:pertpy(Python。scverse)
・効いていない細胞を外す:Mixscape(Seurat)
・ガイドと遺伝子の関連を検定する:SCEPTRE(偽陽性を抑えた検定)
・公開データを同じ形式で:scPerturb(数十のデータセットを揃えて配布)
・摂動の結果を予測する:GEARS/CPA/scGPT
・遺伝子制御ネットワークで仮想ノックアウト:CellOracle
・大規模な参照データ:Replogle らのゲノム規模 Perturb-seq(K562 など)
・予測の評価:平均的な応答を返すだけの基準と必ず比べる
ガイドが入った細胞と、遺伝子が下がった細胞は同じではない。まず標的の発現で効き具合を確かめる。保存推奨。
ポリジェニックスコアを、祖先集団で分けずに1つのモデルで作れるようになった——SPLENDIDが公開され、Rから使える。
これまでの多祖先集団向けの手法の多くは、人をいくつかの祖先集団に分けて、集団ごとにモデルを組む。混血の人や、どの集団にもきれいに入らない人は扱いにくかった。
SPLENDIDは、遺伝的な祖先を連続した値として扱う。All of Us(約22万人)と UK Biobank(約34万人)で検証し、とくに非ヨーロッパ系と混血の人で、既存の手法より予測の精度が上がったとある。
ただし使うのは個人レベルの遺伝型データ。サマリー統計だけでは動かず、バイオバンクの利用申請が前提になる。
配列からクロマチンや転写因子の結合を予測する深層学習モデルを、手元で解釈しやすくなった——tangermemeが公開され、pipで入る。
モデルそのものではなく、学習済みのモデルを「使う側」の道具をまとめたもの。各塩基の寄与(DeepLIFT/SHAP)、1塩基ずつ変えたときの予測の変化、変異の効果の見積もり、配列の設計までを、PyTorch のモデルにそのまま使える。
寄与の高い区間を拾ってモチーフと照合する機能も入っていて、TF-MoDISco に近い精度で、配列が多いときはより速いとある。
ただし、モデルの学習や配布はしない。自分で学習したモデルか、公開されている学習済みモデルを持ってくる必要がある。
【保存版】公共のエピゲノムデータ、どこから取るか早見。
・ヒトとマウスの標準データ:ENCODE ポータル(ChIP-seq・ATAC-seq・DNase-seq など。処理済みのピークもある)
・組織と細胞を広く:IHEC Data Portal(Roadmap Epigenomics を含む国際コンソーシアムのデータ)
・転写因子の結合をまとめて:ChIP-Atlas(公開データをほぼすべて再解析。日本発)/Cistrome DB/ReMap
・単一細胞のクロマチン:CATlas(ヒト・マウスの単一細胞ATACアトラス)
・3Dゲノム:4DN Data Portal
・DNAメチル化:GDC(TCGA のがん検体)/EWAS Atlas
・それ以外の個別のデータ:GEO・SRA(ChIP-Atlas が再解析済みのことも多い)
・転写因子のモチーフ:JASPAR
公共のピークをそのまま重ねると、ピークの呼び方の違いまで重なる。比べるなら、生データから同じ手順で呼び直す。保存推奨。
同じGWASから作ったポリジェニックスコアでも、ヨーロッパ系の集団で学習したものは、他の祖先集団では予測の精度が大きく下がる。
【保存版】ポリジェニックスコアの道具早見。
・既存のスコアを探す:PGS Catalog(論文ごとの重みを配布)
・既存のスコアを手元のデータで計算:pgsc_calc(PGS Catalog 公式のパイプライン)/PLINK2 の --score
・サマリー統計から作る:LDpred2/PRS-CS
・複数の祖先集団のGWASをまとめて使う:PRS-CSx/PROSPER/CT-SLEB
・閾値とクランピングで作る:PRSice-2
・個人のデータから直接作る:snpnet/bigstatsr(大規模な正則化回帰)
・精度の測り方:作るのに使っていない検体で、R² や AUC を測る
スコアを作ったデータで精度を測ると、必ず良く見える。学習・調整・評価の3つにデータを分ける。保存推奨。
【保存版】リン酸化プロテオミクスとシグナル伝達の解析道具早見。
・リン酸化部位の位置の確からしさ:PTMProphet(FragPipe)/MaxQuant の localization probability
・部位ごとの既報を引く:PhosphoSitePlus
・キナーゼの活性を推定する:KSEA/PTM-SEA(PTMsigDB)
・キナーゼと基質の対応:The Kinase Library(配列モチーフから)/NetworKIN
・経路に落とし込む:SIGNOR/OmniPath
・Rでの前処理と検定:PhosR/limma
・タンパク質量での補正:同じ検体のプロテオームを別に測っておく
リン酸化の増減は、タンパク質の量が増えただけでも起きる。部位の変化と、タンパク質の変化を分けて見る。保存推奨。

