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お知らせです。プロチームで働くATのTanakaさんと、noteでコラボマガジンを始めました。
同じ現場のリハビリを、PTとATの両方の視点で書く企画です。「痛みが取れたら終わり」ではなく、競技復帰までを扱います。
いま3本、無料で読めます。マガジンはリプ欄から👇
【肉離れは「後半の疲れたとき」に多い、と言い切れる?】
Xia J, et al. Front Public Health. 2026
受傷場面の印象と、映像を集めた結果は分けて考えたい。実際のサッカーの試合中に起きたハムストリング損傷を、映像から検討したレビューです。
📌
・7研究、計342件の損傷を整理したシステマティックレビュー・メタ解析です。主要な比較は男子のサンプルに限定されています。
・非接触は間接接触より、スプリント型は混合型より多く報告されるという結果が示されています。
・一方で、前半と後半、攻撃と守備、スプリント型と伸張型の比較では、明確な差は認められていません。
・女性の映像研究が少なく、動作姿勢の男女差についても、確定的な結論を出せる状況ではないとされています。
⚠️ これは「受傷した場面の内訳」の比較です。各動作を何回行ったかという曝露量で割った傷害リスクではありません。非接触の場面が多いから、接触時より1回当たりの危険が高い、とは読めません。また、前後半に明確な差がないことは、疲労が関係しない証明でもありません。
💡
現場で受傷場面を聞く際も、「疲れたから」とまとめる前に、速度、ボールへの対応、接触、身体の位置、直前の動作を分けて確認したいところです。
映像から見えるのは、その選手がどんな要求を受けていたかの一部。そこから復帰前に準備したい動作を考えることはできますが、映像だけで原因や有効な予防種目まで確定はできません。添付の図2は、事前に定めた5つの比較を示しています。
doi.org/10.3389/fpubh.2026.1…
図表:原論文 Figure 2(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【ジャンプの評価、跳んだ高さだけで終えていないか】
Yildirim S, et al. Front Physiol. 2026
高く跳べるようになったとき、着地では何が起きているか。男子プロサッカー選手31人を、6週間のプレシーズン前後で比較した研究です。
📌
・NordBordによるハムストリングの遠心性筋力と、フォースプレートによるCMJ後の着地が測定されています。
・着地の最大力は平均約5,430Nから約4,939Nへ低下し、着地の力積は約98.2Nsから約106.5Nsへ増加したと報告されています。
・着地の力の立ち上がり率は約11.6%低下し、体重で正規化したNordic筋力は約7.4%増加しています。
・つまり、着地を一つのピーク値で見る場合と、時間を含めた力積で見る場合では、変化の向きが異なっています。
⚠️ 対照群のない前後比較で、通常のプレシーズントレーニングも行われています。変化をNordicだけの効果とは言えません。体重にも変化があり、傷害の発生率や個々の関節にかかる負荷を直接確かめた研究でもありません。
💡
最大着地力が下がれば何でも良い、という読み方は避けたいところです。跳躍高、接地時間、動作の仕方などが変われば、力の波形の意味も変わります。
リハビリでジャンプを再開するときも、跳べた距離や高さに加えて、どう受け止めたかを確認する。数値を取れるならピークだけでなく波形や力積も見る。筋力の変化と競技課題の変化を、別々に確かめるきっかけになる研究です。図1は前後の測定値を示しています。
doi.org/10.3389/fphys.2026.1…
図表:原論文 Figure 1(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【救急バッグはある。誰が、どこへ運ぶかは決まっている?】
Heron N, Griffin S. Front Sports Act Living. 2026
緊急時の準備は、必要な物品をそろえたら終わりではありません。スポーツ現場の重大事故について、事前準備から事後の支援まで整理したポリシーブリーフです。
📌
・会場ごとの緊急時対応計画(EAP)を用意し、見える場所に置くだけでなく、チームとして繰り返し練習することが提案されています。
・表1では、住所・進入経路・搬送先、スタッフの集合場所、医療室と退出経路、機材の位置と呼び出し方法、状況別の役割などが整理されています。
・対応を担う可能性のある非医療スタッフへの共有や、訪問するメディカルチームへの事前提供も重視されています。
・事故後も、本人だけでなく、対応したスタッフや目撃者への支援が必要とされます。情報共有、ケア、落ち着ける環境、周囲とのつながり、復帰の検討という5つの視点が紹介されています。
⚠️ 特定の計画による死亡率や傷害率の低下を検証した試験ではありません。日本の救急体制や各スタッフの資格・役割に合わせ、主催者、チームドクター、地域の救急機関と具体化する必要があります。記事は訂正後の版を参照しています。
💡
例えば「AEDはどこか」だけでなく、「誰が取りに行き、どの経路で戻るか」。いつもの練習場で分かっていても、遠征先で同じように動けるとは限りません。
メディカルの技術だけでなく、周囲のスタッフも含めて実際に動ける状態をつくる。リハビリやコンディショニングとは別に、チームで確認しておきたい実務です。添付はEAPの項目を整理した表1です。
doi.org/10.3389/fspor.2026.1…
図表:原論文 Table 1(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【キックが強い選手は、跳ぶ前の「ブレーキ」も強い?】
Nguyen MNQ, et al. Front Sports Act Living. 2026
キックの評価を、蹴る脚の筋力だけで考えてよいのか。アリーナサッカーの男子プロ32人を対象に、下肢の力発揮とシュートを調べた研究です。
📌
・フォースプレートで等尺性ミッドサイプル、CMJ、ドロップジャンプ、反復ホップを測定し、24〜48時間後にシュートテストを実施しています。
・球速との有意な関連が示されたのは、CMJの制動局面の力積です。モデルのR²は0.15で、球速のばらつきの約15%が説明されています。
・シュートの正確性は、等尺性の最大力と反復ホップの反応筋力指数を用いたモデルでR²=0.36と報告されています。
・「速く蹴る」と「正確に蹴る」では、関連する体力指標が同じではない可能性が示唆されています。
⚠️ 横断的な関連で、制動力積を鍛えれば球速が上がると証明した介入研究ではありません。小標本の回帰モデルで、他の集団での検証も必要です。屋内のアリーナサッカーであり、11人制や負傷選手へそのまま適用はできません。
💡
図1で注目したいのは、説明できた部分より、まだ説明できない部分の大きさです。球速モデルでは約85%が残っています。筋力やジャンプの数字だけで、キック全体を説明できるわけではありません。
キック再開を考える際も、体力テストに加えて、助走、支持、スイング、狙い、反復したときの反応を見たいところです。数値を競技動作へつなげる際の、手がかりと限界の両方がある研究だと思います。
doi.org/10.3389/fspor.2026.1…
図表:原論文 Figure 1(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【通常練習に戻っていても、膝の機能はそろっているか】
Nas İ, et al. Front Sports Act Living. 2026
復帰したかどうかと、何が回復しているかは分けて確認したい。今回はサッカーではなく、片側の膝を受傷したレスリング選手の研究です。
📌
・通常練習へ復帰したエリート選手20人(男女各10人)を対象に、受傷側と非受傷側を比較しています。受傷は3〜6か月前で、傷害の種類は一様ではありません。
・関節位置覚、Yバランステスト、片脚ホップ、痛み、主観的な膝機能が評価されています。
・受傷側では、膝屈曲15度の位置を再現する誤差が大きく、Yバランスの後内側リーチと片脚ホップ距離が低い結果が報告されています。
・平均のホップ左右対称性指数は約90.7%ですが、ばらつきもあります。集団の平均が90%を超えていても、各選手の全機能が回復していることにはなりません。
⚠️ 20人の横断研究で、再受傷を追跡した研究ではありません。この左右差が将来の怪我を予測するとは言えず、非受傷側も受傷前の機能を保っている保証はありません。レスリングの結果をサッカーの復帰基準へ直接置き換えることもできません。
💡
気になるのは、すでに練習している選手にも、課題によって差が残っている点です。距離を跳べるかだけでなく、膝の位置を捉える課題や、方向を変えたバランス課題ではどうか。
復帰の前後で同じ評価を継続し、残った課題を補強へつなげる。復帰日を境に評価を終わらせないための材料として読みたい研究です。添付は表2です。
doi.org/10.3389/fspor.2026.1…
図表:原論文 Table 2(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【右にも左にも同じ回数。負荷まで同じとは限らない】
Havanecz K, et al. Front Sports Act Living. 2026
切り返しを左右同じ本数行えば、左右の負荷もそろうのか。育成年代の実際の練習・試合を追うと、回数とは別の見え方が報告されています。
📌
・U15男子サッカー選手21人を、92回の練習と21試合にわたって観察した研究です。試合の解析対象は条件を満たした15人です。
・慣性センサーを用い、方向転換の回数と、方向別の動きから算出される負荷指標を分けて分析しています。
・方向別の負荷指標では、動く方向と利き足の組み合わせによる交互作用が、練習・試合の両方で報告されています。
・一方、方向転換の回数には対応する明確な効果が認められていません。「何回曲がったか」と「どのような動きの負荷があったか」は一致しない可能性があります。
⚠️ 利き足は「ボールを蹴るときに選ぶ脚」で分類されています。切り返しで必ず優位になる脚を直接示すものではありません。また、センサーの方向別負荷は、左右の膝・股関節にかかる力を直接測定した値ではなく、傷害発生の予測も検証していません。
💡
リハビリでも、左右の回数をそろえたところで終わらず、進入速度や曲がる角度、ボールの有無など、動作条件まで確認したいところです。
「非利き側にいつも負荷が多い」と決めつけるより、その選手がどちらへ、どんな条件で曲がっているかを見る。回数だけでは見えない部分を考える材料になります。図1は練習中の方向別負荷の分布です。
doi.org/10.3389/fspor.2026.1…
図表:原論文 Figure 1(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【選手の回復を考えるとき、SNSの負担も聞けているか】
Tooth C, et al. Front Psychol. 2026
睡眠や疲労の確認で、練習量だけを見ていないか。若い競技者にとって、SNSは支えになる一方、回復を邪魔する場にもなりうるようです。
📌
・12〜24歳の競技者912人を対象としたオンライン横断調査です。
・93.4%が少なくとも1つのSNSを毎日利用し、63.6%が練習や回復への干渉を自己申告しています。
・57.1%がオンラインでの励ましや競技上の支援を経験した一方、47.7%が睡眠への悪影響、25.4%がSNSに関連したストレス・不安を報告しています。
・オンラインでの自分の見せ方にプレッシャーを感じる選手は29.2%。誹謗中傷などのオンライン被害は10.4%から報告されています。
・利用時間が長いことと、睡眠、気分、自己イメージなどへの否定的な影響の申告との関連も示されています。
⚠️ 本人の認識を調べた研究で、精神疾患を診断したものではありません。SNSが不調の原因だという因果関係も確定していません。SNSを一律に禁止すれば解決する、という結果ではありません。
💡
「スマホを見すぎ」だけで終わらせず、何を見て、どう感じて、眠る時間や練習にどう影響しているかを聞く。その方が、選手の困りごとに近づけると思います。
離脱中はチームとのつながりを保つ手段にもなります。利用時間だけを管理するのではなく、相談できる相手や被害への対応も含めて考えたい内容です。図3は利用時間別の自己申告の比較です。
doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1…
図表:原論文 Figure 3(CC BY 4.0/切り出し・出典追記)
【切り返しのタイムが改善。どの局面が変わった?】
Li J, et al. Front Physiol. 2026
同じ505テストでも、速く入れるようになったのか、減速が変わったのか、折り返してから速くなったのかで解釈は違います。合計タイムの先を調べた研究です。
📌
・男子サッカー選手24人(平均14.6歳)に、72時間を空けて505テストを実施し、レーダーから得た局面別指標の再現性を検討しています。
・初期加速、減速、再加速に分け、速度や距離に加えて、モデルで推定した水平力・力積などが分析されています。
・別日の比較では、減速局面の平均水平制動力積のICCは0.90、再加速局面の最大水平力は0.91と、高い再現性が報告されています。
・ただし、同じ日の試行間では、検討した指標の典型誤差が「意味のある最小変化」を上回りました。小さな数値の変動を、そのまま改善と判断しにくい結果です。
⚠️ 1種類の機器・解析法による小規模研究です。力は床反力計で直接測ったものではなく、速度などからの推定です。指標の再現性が高いことと、傷害リスクや復帰可否を判定できることは別です。
💡
細かい数字が取れるほど、細かい変化を信じたくなります。でも先に確認したいのは、その測定がどの程度ぶれるかです。
慣熟、進入条件、休息、測定日をそろえたうえで局面ごとに見る。合計タイムだけで「減速が良くなった」と結論づけないことが大事だと思います。図1は局面の分け方を示しています。
doi.org/10.3389/fphys.2026.1…
図表:原論文 Figure 1
【試合の前日は寝た。では、試合の後は?】
Larson A, et al. Front Sports Act Living. 2026
試合前の睡眠には気を配っていても、試合後から翌朝までの時間は、移動や学校、次の練習に押されがちです。育成年代では、その日の種類によって睡眠時間が変わることが報告されています。
📌
・平均15.6歳の競技者33人(男子14人・女子19人)を対象に、14日間、活動量計と睡眠日誌で観察した研究です。
・試合日の後の睡眠は平均7.9時間、練習日の後は8.6時間、休養日の後は9.2時間と報告されています。
・解析では、試合後の睡眠は練習後より約46分、休養日後より約81分短い結果が示されています。
・一方、試合・練習・休養日の「前夜」の睡眠時間には、明確な差が認められていません。休養日前後は、起床時刻が遅い傾向も報告されています。
⚠️ 少人数の観察研究で、サッカーだけを対象にしていません。試合が睡眠不足を直接引き起こしたことや、翌朝の練習を変えれば傷害が減ることまで確認した研究ではありません。活動量計による推定にも限界があります。
💡
選手へ「しっかり寝よう」と伝える前に、寝る時間を確保できる日程かも確認したいところです。帰宅・食事・翌朝の集合時刻まで並べると、本人の意識だけでは変えにくい部分が見えてきます。
復帰過程でも、グラウンドで積む負荷と、その後に回復できる時間はセットで考えたい。添付の図1は、各日の前後の睡眠時間を比較したものです。
doi.org/10.3389/fspor.2025.1…
図表:原論文 Figure 1
【Nordicは、回数を増やすほど切り返しも良くなる?】
Hammami R, et al. Front Sports Act Living. 2026
補強の効果が欲しいとき、ついセット数や回数を増やしたくなります。ただ、競技動作への変化まで見ると、多い方がよいとは限らないようです。
📌
・13〜14歳の男子サッカー選手60人を、Nordicの低・中・高ボリューム群に各20人ずつ無作為に割り付けた研究です。
・週2回、8週間実施。1回の量は、低群が4セット×3回、中群が4×6回、高群が4×9回。通常のサッカー練習に追加されています。
・ボールあり・なしの方向転換テストでは、低ボリューム群が中・高ボリューム群より良好な結果を示したと報告されています。
・10m走では低群と高群に差が認められましたが、20m走では群間の明確な差は認められていません。
⚠️ 通常練習のみの対照群はなく、1クラブの男子育成年代が対象です。肉離れの発生率を比較した研究ではありません。「少ない回数の方が怪我を防げる」「4×3が全選手の最適量」とは言えません。
💡
注目したいのは、回数ではなく、補強後に何をできるようにしたいかです。筋力を上げたいのか、方向転換へつなげたいのか、シーズン中に継続したいのかで、確認する結果は変わります。
低い量から始め、動作の質、翌日の張り、通常練習への影響も見ながら調整する。その考え方を検討する材料になります。添付の表4は方向転換の結果です。
doi.org/10.3389/fspor.2026.1…
図表:原論文 Table 4
【2025年のレビューでも、2025年の研究まで入っているとは限らない】
Vatne E, et al. Sports. 2025
サッカーの回復方法を整理したレビューです。何が効くかを読む前に、どこまで検索し、誰のデータを集めたのかも確認したい内容でした。
📌
・41研究、計685人を対象に、運動後の回復方法を整理しています。
・参加者は男子630人、女子55人。男子が約92%を占めています。
・冷水浴、アクティブリカバリー、栄養、睡眠などが扱われていますが、方法によって研究数には差があります。研究が多いことと、効果が大きいことは同じではありません。
・公表は2025年ですが、検索の終了日は2023年10月17日です。2025年に出た別の試験まで含めて評価しているわけではありません。
⚠️ 対象や介入、測定項目が異なり、効果を一つの数値に統合したメタ解析ではありません。データ抽出・質評価が単独の担当者による点などにも限界があります。この一覧から『回復法ランキング』を作るのは難しいです。
💡
現場で選ぶ時は、『回復に効く』をもう少し分けたいです。筋肉痛なのか、ジャンプなのか、翌日の走力なのか。そして、誰に、いつ、どの条件で調べた結果なのか。
男子が多い研究結果を女子チームへそのまま当てはめてよいか、連戦と単発の運動後を同じに扱ってよいか。レビューという形になっていても、そこは残る問いです。
新しい論文だから情報も全部最新、とは限りません。発行年に加えて検索日と対象を確認するだけでも、受け取り方は変わると思います。
添付は原論文Table 3の冒頭3項目を抜粋。各方法の研究数・条件・結果の整理で、優劣を順位づけした表ではありません。
出典:doi.org/10.3390/sports131003…
表:CC BY 4.0(原表内容を抜粋・読みやすく再配置)
【アイスバスの後に楽になることと、走力が戻ることは同じか】
Gustafsson J, et al. Eur J Appl Physiol. 2025
回復方法を選ぶとき、筋肉痛、本人の感覚、スプリント能力を一つにまとめていないか。冷水浴・温水浴・プラセボを比較した、男子サッカー選手の研究です。
📌
・短期の検証は15〜19歳の40人。90分の模擬試合後に、冷水浴10℃・10分、温水浴42℃・20分、偽のレーザー介入を比較しています。
・20mスプリント、ジャンプ、膝伸展筋力などを、試合前後と21時間後、45時間後に評価しています。
・冷水浴や温水浴がプラセボより身体パフォーマンスの回復を明確に改善する結果は示されていません。
・15週間の継続介入では19人が残り、トレーニング適応についても明確な群間差は報告されていません。
⚠️ 少人数で、長期検証は脱落が多い研究です。対象は男子の若年選手で、模擬試合の環境や介入までの時間にも条件があります。『どの状況でも冷水浴は無意味』とは言えません。何もしない群との比較でもなく、傷害予防効果を調べた研究でもありません。
💡
選手が『気持ちよかった』『軽くなった』と感じることは、それとして受け止めたいです。ただ、その感覚だけで翌日のスプリントや筋力まで回復したと判断するのは別の話だと思います。
何を目的に使うのか。主観的なつらさを和らげたいのか、翌日の運動能力を戻したいのか。目的と評価をそろえて、睡眠や食事、練習量なども含めて考えたいです。
添付は原論文Figure 3の20mスプリント時間。PLA=プラセボ、CWI=冷水浴、HWI=温水浴です。星印をそのまま『群間で効果あり』とは読めません。
出典:doi.org/10.1007/s00421-025-0…
図:CC BY 4.0(出典表記追加)
【月経中は怪我が多い? 発生率と離脱日数を分けて読む】
Ferrer E, et al. Front Sports Act Living. 2025
『月経と怪我の関係』という言葉だけでは、何を比べたのかが分かりません。怪我の起こりやすさと、起きた後に失われる時間は、別の指標です。女子エリートサッカー選手の追跡研究です。
📌
・33人を4シーズン追跡し、852周期と80件の傷害を記録しています。
・出血期間中の傷害は11件、それ以外は69件。ただし日数や参加時間が違うため、この件数だけで比較はできません。
・全傷害の発生率には、出血期間中とそれ以外で統計学的に明確な差は報告されていません(p=0.55)。
・一方、1,000時間あたりの離脱日数を示す傷害負担は、出血期間中684日、それ以外206日と報告されています。
⚠️ 観察研究で、出血期間中の傷害は11件と少数です。長期離脱を伴う数件の影響を受けやすく、出血自体が重症化を引き起こしたとは言えません。カレンダーでの分類は、ホルモン濃度を測定して周期の各段階を確定することとも異なります。
💡
この結果を『月経中は一律に負荷を下げよう』とは読まない方がよいと思います。発生率に明確な差がなくても、傷害負担には差が出る。まずは指標の意味を分けることが必要です。
選手ごとの症状や練習への影響を確認することと、周期だけで危険な日を決めることは違います。記録する場合も、本人の意思やプライバシーを尊重し、何のために誰が見る情報なのかを共有したいです。
添付は原論文Table 1。IRは発生率、burdenは離脱日数に基づく負担です。
出典:doi.org/10.3389/fspor.2025.1…
表:CC BY 4.0(原表内容のレイアウト調整)
【足首の不安定感。バランスが改善したら、リハビリは終わりか】
Skwiot M. J Clin Med. 2026
慢性足関節不安定症のリハビリでは、片脚バランスがよく使われます。ただ、一つのテストの改善だけで、競技中の不安定感まで解決したとは限りません。アスリートを対象としたシステマティックレビューです。
📌
・13件のランダム化比較試験、計490人を整理しています。
・バランス、筋力、神経筋トレーニング、プライオメトリクスなど、介入内容はさまざまで、主な介入期間は4〜12週間です。
・本人が感じる機能や不安定感、動的バランス、筋力などに改善が報告されていますが、すべての研究が同じ項目を測っているわけではありません。
・介入や評価の違いが大きく、結果はメタ解析ではなく記述的にまとめられています。特定の種目が最も優れていると決められる内容ではありません。
⚠️ 短期の機能改善と、長期の再捻挫予防は別の結果です。追跡期間などにも限界があり、『このプログラムを行えば再受傷しない』『この数値なら復帰できる』という基準を示したレビューではありません。
💡
バランステストの点数が良くなっても、本人は『切り返す時はまだ不安』と感じているかもしれません。反対に、不安が少なくても、必要な筋力や動作の準備が十分とは限りません。
本人の訴えと、機能テストと、競技動作。それぞれを別々に確認し、どこが残っているのかを整理したいです。種目を増やすことより、その種目で何を戻そうとしているのかを説明できることが大切だと考えています。
添付は原論文Table 5。著者によるエビデンスの評価で、個々の選手の復帰判定表ではありません。
出典:doi.org/10.3390/jcm15010220
表:CC BY 4.0(原表内容のレイアウト調整)
【睡眠スコアが悪い。では、何が悪かったのか】
Giannaki CD, et al. Front Sports Act Living. 2026
ウェアラブルで睡眠が数字になると、比較しやすくなります。ただ、その数字が何を測り、何を推定しているのかは確認したいところです。サッカー選手の睡眠を扱ったナラティブレビューです。
📌
・睡眠ポリグラフ検査は脳波などを測定し、睡眠段階を評価する方法です。一方、日常的なチーム運用には負担があります。
・アクチグラフィやウェアラブルは、睡眠時間やタイミング、規則性を継続して見るのに役立つ可能性があります。ただし、機器が推定する睡眠段階を、脳波による測定と同じには扱えません。
・質問紙や睡眠日誌は、本人の寝つき、眠気、生活背景を確認する手段です。機器とは違う情報を補います。
・スコアを完璧にしようと気にしすぎることが、かえって睡眠への不安につながる可能性も取り上げられています。
⚠️ 介入効果を統合したメタ解析ではありません。『この機器を使えば回復が良くなる』『低いスコアなら怪我が増える』と証明した研究でもありません。機種や対象によって測定精度は異なります。
💡
数字だけで『今日は寝られていない』と決める前に、本人の感覚や、その前後の生活も聞きたいです。帰宅が遅かったのか、寝つけなかったのか、途中で目が覚めたのかでは、考える対応も違います。
選手同士の点数を比べるより、その選手の普段からの変化を、日誌や会話と一緒に見る。測定の目的は点数を上げることではなく、休めない背景を見つけることだと思います。
添付は原論文Table 1。各測定方法の特徴・負担・限界を比較しています。
出典:doi.org/10.3389/fspor.2026.1…
表:CC BY 4.0(原表内容のレイアウト調整)
【怪我の件数だけでなく、長く離脱する怪我を減らせるか】
Obërtinca R, et al. Sports Med Open. 2025
育成年代の傷害予防を考えるとき、軽傷も長期離脱もまとめた件数だけでは、選手が失った時間が見えにくくなります。FUNBALLの研究では、28日以上の離脱を伴う傷害に焦点が当てられています。
📌
・コソボの13〜19歳男子サッカー選手1,253人、55チームを割り付けたクラスターRCTの二次解析です。45チームがシーズンを完了しています。
・介入は通常のウォームアップ後に15〜20分、週2回以上。バランス、体幹、筋力、ジャンプ、走動作などを段階的に組み合わせています。
・28日以上離脱した傷害は、介入群17件、対照群33件。1,000時間あたりの発生率は0.31対0.62、発生率比0.51(95%CI 0.28〜0.91)と報告されています。
・練習中の重症傷害では差が報告されていますが、試合中の比較では統計学的に明確な差は示されていません。
⚠️ 重症傷害を主目的に人数設計した研究ではなく、二次解析です。参加時間はチーム単位で集計され、脱落もあります。すべての傷害や、女子・他の年代にも同じ効果があるとは言えません。
💡
『何件減ったか』に加えて、『何日グラウンドを離れずに済んだか』まで見る。その方が、選手やスタッフに伝わりやすいと思います。
また、これは一つの種目の効果ではなく、複数の要素を組み合わせて継続した結果です。良さそうな種目を単発で入れるだけでなく、誰が担当し、週のどこに置き、どう難しくしていくか。予防プログラムを日常に組み込むところまで考えたいです。
添付は原論文Table 3の全体・練習・試合の行を抜粋しています。
出典:doi.org/10.1186/s40798-025-0…
表:CC BY 4.0(原表内容を抜粋・読みやすく再配置)
【同じ距離を跳べても、考えながらの着地は同じではない】
Vendrig T, et al. Orthop J Sports Med. 2025
ホップテストで距離がそろったら、動き方も戻ったと言えるのか。認知課題を加えた研究では、跳ぶ距離を変えなくても、膝の動きが変化することが報告されています。
📌
・対象は健康な活動的な大学生20人。ACL再建術後の選手を対象とした研究ではありません。
・サイドホップ、片脚ホップ、片脚トリプルホップを、通常条件と、引き算をしながら行う条件で比較しています。距離は条件間で統一しています。
・サイドホップでは、認知課題を加えると着地中の脛骨内旋が増え、最大差は約2.07度と報告されています。
・トリプルホップでは前方への脛骨移動が増える一方、内旋は減少。片脚ホップでは同様の変化は確認されていません。課題によって、変化の方向も異なります。
⚠️ 皮膚に付けたマーカーによる動作解析で、ACLへの負荷やその後の受傷を直接測定した研究ではありません。『考えながら跳ぶと危険』『この変化があれば再受傷する』とは言えません。暗算がサッカーの判断をそのまま再現するわけでもありません。
💡
距離や回数という結果だけでは、そこに至る動き方まで同じとは分からない。その点が気になります。
リハビリでも、決められた動作ができることと、相手やボールを見ながら動けることは分けて考えたいです。ただ難しい課題を足すのではなく、何を加えると、どの動作が変わるのかを確認する。今回の結果は、その視点を考える材料になります。
添付は原論文Figure 2。課題ごとの脛骨前方移動・内旋の比較で、傷害リスクの判定図ではありません。
出典:doi.org/10.1177/232596712513…
図:CC BY 4.0(出典表記追加)
【クレアチンで筋力が上がることと、怪我が減ることは別】
Soler Hurtado M, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2026
『傷害が少なかった』という数字を見ると、予防に使えるのか気になります。ただ、人数と不確実性まで一緒に確認したい研究です。
📌
・男子アマチュアサッカー選手を対象に、クレアチンとプラセボを比較した14週間のパイロット試験です。24人が割り付けられ、23人が解析されています。
・介入はクレアチン3gを週5日。膝伸展など一部の筋力項目とジャンプ高では、群間で経時変化の差が報告されています。
・傷害はクレアチン群1/12人、プラセボ群4/11人。
・相対リスクは0.23ですが、95%信頼区間は0.03〜1.75、p=0.155。傷害を減らす効果が統計学的に確認されたわけではありません。
⚠️ 単一チーム・少人数・単盲検の研究です。傷害の自己申告や、練習・試合への参加時間を調整していない点などにも注意が必要です。傷害件数が少なく、『77%予防できる』と読み替えることはできません。筋力も、すべての測定項目が同じように改善したわけではありません。
💡
筋力やジャンプの変化と、傷害予防の効果は、別の結果として読む必要があると思います。数人の違いで割合が大きく動く研究では、パーセントだけだと印象が強くなりすぎます。
今回の結果は次の研究につながる材料ですが、これだけで選手に『怪我を防げるから飲もう』とは説明できません。サプリメントの話でも、何が報告され、何がまだ分からないのかを分けて伝えたいです。
添付は原論文Table 2の筋力・身体計測・ジャンプ等の結果です。傷害件数は表ではなく本文に記載されています。
出典:doi.org/10.1080/15502783.202…
表:CC BY 4.0(原表のスクリーンショット・出典表記追加)
【寝不足をカフェインで補っても、スプリントまで戻るとは限らない】
Cheng R, et al. Front Physiol. 2025
眠気が軽くなったことと、高強度の動きを繰り返せることは、分けて考えたいところです。睡眠制限とカフェイン摂取を組み合わせた、男子大学サッカー選手の研究です。
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・対象は10人。通常睡眠、5時間以下の睡眠+プラセボ、5時間以下の睡眠+カフェインの3条件を比較しています。
・カフェインは体重1kgあたり3mg。摂取60分後、午前9時から運動テストを行っています。
・反復スプリントは35mを6本、間の休息は10秒という条件です。
・睡眠制限によって反復スプリント能力の低下が報告されています。一方、睡眠制限下でカフェインを摂っても、プラセボと比べて反復スプリントの測定項目に有意な改善は認められていません。
⚠️ 少人数のランダム化クロスオーバー試験です。『有意差がない』ことは『効果が絶対にない』という意味ではありません。対象、摂取量、時間帯が限られており、すべての選手や競技に一般化はできません。怪我の発生を検証した研究でもありません。
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朝にコーヒーを飲んで、本人が『目が覚めた』と話していても、それだけで睡眠不足から回復したとは判断できないと思います。
サッカーでは、1本走れるだけでなく、短い休息で何度も走ることが求められます。カフェインを使うかどうかとは別に、前夜の睡眠や当日の動きの反応を確認する。その視点は残しておきたいです。
添付は反復スプリントの結果を示す原論文Figure 5。NSN=通常睡眠、SRP=睡眠制限+プラセボ、SRC=睡眠制限+カフェインです。
出典:doi.org/10.3389/fphys.2025.1…
図:CC BY 4.0(PDFから切り出し・出典表記追加)
【復帰テストをした時には、すでに競技へ戻っていた】
Lopes R, et al. J Clin Med. 2026
足関節の復帰評価は、何を測るかだけでなく『いつ測るか』も考えたいところです。Ankle-GOの実際の使われ方を調べた研究が公開されています。
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・Webアプリに登録された6,934人、計11,055回の評価を解析。対象の88.5%が足関節捻挫で、骨折や術後なども含まれています。
・初回評価のタイミングは、受傷などから中央値2.33か月。
・初回Ankle-GO評価より前に、すでに競技復帰していた人は20.4%と報告されています。
・継続評価の利用も限られており、複数回測って経過を追う運用には課題が示されています。
⚠️ 後ろ向きの記述研究です。『Ankle-GOを受けていない』ことと『何の評価もなく復帰した』ことは同じではありません。他の診察や機能評価を受けていた可能性があります。また、再受傷を追跡して、この評価の予防効果を検証した研究ではありません。
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良いテストを知っていても、復帰が決まった後に初めて測るのでは、その判断に使えません。
誰が、どの段階で評価し、結果を誰に渡すのか。基準を満たさなければ何を補い、いつ測り直すのか。テスト項目と一緒に、そこまで決めておく必要があると感じます。
添付は原論文Figure 7。各回の復帰状況を示していますが、評価回ごとに対象人数が異なるため、同じ集団の回復曲線としては読めません。
出典:doi.org/10.3390/jcm15145463
図:CC BY 4.0(出典表記を追加)




















