Pinned Tweet
Replying to @ats
投稿が拡散されているようなので、ちょっと宣伝させてください。
Pythonの入門書を書いていますので、ぜひお読みください!
amzn.asia/d/gCfTi93
AIが賢くなるだけではない。AI自身が、自分を動かす計算基盤を速くする競争が始まっている。
doubleAIが発表した「Maxwell」は、同社が「Code Execution Model」と呼ぶ仕組みで、プログラムのソースコードを書き換えるのではなく、実行中の処理を観察し、実際のデータやCPU・GPU環境に合わせてバイナリを最適化する。Whisper-smallやNetworkX、LTX-2.5などで大幅な高速化を示しており、LTX-2.5では2基のB200を使った4K動画生成を250秒から134秒へ短縮したとしている。
面白いのは、これが単なる「AIによるコード生成」ではない点だ。Maxwellはボトルネックを探し、より速い実装を生成しつつ、元の処理と意味的に同じであることを確認して差し替える。つまりLLM、プロファイリング、JIT、superoptimization、形式検証を組み合わせ、従来は人間の低レイヤー最適化に頼っていた領域を自動化しようとしている。
背景にあるのは、AI競争の制約がモデルの大きさだけでなく、計算資源そのものへ移っていることだ。GPUを倍に増やせなくても、同じGPUで処理時間を半分にできれば、推論量や実験回数を大きく増やせる。Maxwellのような技術が効けば、「もっとGPUを買う」競争の一部が、「いまあるGPUをどこまで無駄なく働かせるか」というソフトウェア競争に変わる可能性がある。
heymaxwell.ai/
それでも重要なのは、Maxwellを「新しい種類のモデル」と呼ぶべきかどうかではない。従来はコンパイラ開発者やCUDAの専門家が手作業で探していた最適化を、AIが大量に探索し、検証まで含めて回せるかどうかである。もし多数のワークロードから共通する最適化パターンを見つけられるなら、Maxwellは単なる高速化ツールではなく、次世代コンパイラの改善点を発見する実験装置にもなりうる。
AIが奪うのは仕事だけではない。「努力して専門性を身につければ、上の階級に行ける」という社会の物語そのものかもしれない。
Noemaの論考が描くのは、AIによる失業よりも大きな変化だ。現代の富裕層は、昔の資本家のように資産だけを持つのではなく、医師、弁護士、金融、エンジニアなど高所得の専門職として働きながら、同時に株式や不動産も持っている。高い給与で資産を築き、その資産がさらに所得を生む。この「労働所得と資本所得の両方を持つ層」が、現代の上位階級を形作っている。
この構造を支えてきたのが教育だった。裕福でない家庭に生まれても、勉強して高スキル職に就き、高所得を得て、そこから資産を形成する。実際には狭く不平等な道であっても、「能力と努力によって上へ行ける」という経路が存在すること自体が、現代社会の格差をある程度正当化してきた。
ところがAIは、まさにその階段の上部にある知的労働を狙っている。文章を書く、コードを書く、調査する、分析する、助言する。AIがこうした仕事を代替すれば、高学歴による賃金プレミアムが縮み、「教育→高所得→資産形成」というルートが切れる。一方でAIが専門職を補完する方向に進んだとしても、すでに高所得と資産を持つ人ほどAIの恩恵を受けやすく、上位層はさらに固定される。どちらの場合も、下から上へ登る道は細くなる。
noemamag.com/the-end-of-upwa…
柴田 淳 - 「みんなのPython」の著者・機械学習講師 retweeted
「AIで理論物理もなくなる」と言われるのは、理論研究が「○○モデル」をどこまで解けるかという競争に偏ったからではないか。だが理論物理の原点は、自然現象をいかに理論的にモデル化するかにある。そこに立ち返れば、研究すべきことはいくらでもある。
Transformer一辺倒に見えた時系列AIで、RNNが戻ってきた。しかもその先には、「時系列を渡すだけで予測する」基盤モデルの姿が見えている。
TempoPFNは、TransformerではなくLinear RNNを中核に据えた時系列予測モデルである。GatedDeltaProductという仕組みによって、従来のRNNが苦手だった逐次計算の制約を弱めつつ、長い系列を効率よく扱う。さらにstate weavingを使い、予測期間全体の情報をモデル内部でやり取りさせることで、windowingやpatchingに強く頼らず将来をまとめて予測する。
ここで重要なのは、「RNNの復権」そのものではない。Transformerが万能という前提から離れ、時系列には時系列に合った構造を選び直している点にある。長期間にわたって状態を保持する必要があるデータでは、RNN系の設計が依然として合理的であり、TempoPFNは約4000万パラメータという比較的小さな規模でも有力モデルと競争できる性能を示した。
そして、この設計が向かう先は単なる高速な時系列モデルではない。TempoPFNは約1000万本の人工時系列だけで事前学習し、実データに対して追加学習なしのゼロショット予測を行う。季節性、トレンド、スパイク、急変、欠損など、現実で起こりうる変化のパターンを人工的に大量経験させることで、「個別の系列」を覚えるのではなく「時系列の読み方」そのものを学ばせている。
arxiv.org/abs/2510.25502
この発想が進めば、時系列予測の使い方はLLMに近づく。これまでは売上や需要のデータごとにモデルを選び、学習し、調整していた。将来は、時系列を渡せば、その場で予測が返ってくるのが標準になるかもしれない。
AIブームが崩れたとき、壊れるのはAI企業の株価だけではない。IMFが警戒しているのは、その衝撃が金融市場全体へ広がることだ。
IMFは、現在の金融市場の強さの一部がAIへの強い期待に支えられているとみている。大手テック企業はデータセンターや半導体へ巨額投資を続け、投資家もAI関連企業へ資金を集中させている。もしAIの収益化が期待ほど進まなければ、株価の急落だけでなく、設備投資の縮小や信用の引き締まりにつながり、世界経済へ波及する可能性がある。
しかも問題は、AI関連企業が互いに投資し、顧客になり、資金を提供し合うような構造が強まっていることだ。一社の成長鈍化が別の企業の売上を押し下げ、その企業の評価額低下がさらに別の資産価格へ伝わる。AIを中心にした巨大な資金循環が、成長時には追い風でも、逆回転すれば損失を増幅する仕組みにもなり得る。
ここで重要なのは、「AIが本物か偽物か」という話ではない。
theregister.com/ai-and-ml/20…
世界最高峰の数学者テレンス・タオが、いま「数学をする時間」を削ってまでAIへの対応に追われている。問題はAIが数学を解けることではない。数学という営みそのものが、何を価値とするのかを問い直されていることだ。
UCLAの数学者でフィールズ賞受賞者のTerence Taoは、AIと数学の関係をめぐる議論の中心人物になっている。本人もNYTのインタビューを「Terry Tao and the Crisis in Math」と紹介しており、UCLAも、特に若い研究者への影響を含め「AIが数学研究で急速に存在感を増していること」が記事の中心だったと説明している。
背景にあるのは、AIが単なる計算補助から、未解決問題を探索し、新しい数学的構成を発見する段階へ進みつつあることだ。実際、タオ自身が参加したAlphaEvolveの研究では、解析・組合せ論・幾何・数論にまたがる67問を対象に、多くで既知の最良解を再発見し、一部ではそれを改善した。
ここで揺らいでいるのが、「難しい問題を最初に解く」という数学界の評価軸である。タオは従来の数学を「Math 1.0」と呼び、証明が希少だったからこそ、難問を解くことを中心に研究者の名声や制度が組み立てられてきたと整理する。AIによって証明の供給量そのものが増えるなら、その前提が崩れる。
すると重要になるのは、AIより速く問題を解くことではなく、出てきた証明を検証し、意味を理解し、既存の数学との関係を見つけ、他の人が使える知識に変えることだ。タオはすでに、証明を生み出して「一番乗り」することへの評価を相対的に下げ、解説、査読、整理、標準化といった仕事をもっと評価すべきだと論じている。つまりAI時代の数学者は、「証明の生産者」から「数学的理解の編集者」へと役割を広げることになる。
nytimes.com/2026/10/16/us/ma…
だからタオの危機感は、数学だけの話ではない。AIが論文を書き、仮説を作り、結果まで出すようになったとき、人間の研究者に残る価値は「答えを出したこと」なのか、それともその答えがなぜ重要なのかを理解し、知識体系の中に位置づけることなのか。数学界はいま、その問いを他の学問より少し早く突きつけられている。
数学者の話として読むと特殊に見えるが、これはホワイトカラーにとってかなり嫌な未来予想図でもある。なぜならAIが代替し始めているのは単純作業ではなく、これまで高い教育や経験が必要だと思われていた「それっぽい成果物を作る仕事」だからだ。コード、レポート、分析、プレゼン、契約書。こうした仕事は長い間、専門性そのものだと考えられてきた。
でも数学で証明を書くこと自体の希少性が下がるなら、他の職種でも成果物を作ることの希少性は下がる。そのとき評価されるのは、AIより上手に資料を書く人ではなく、そもそも何を調べるべきかを決め、AIの出力の間違いに気づき、その結果に責任を持てる人だろう。問題は、企業の人事評価や教育制度がそこまで早く変われるかどうかだ。AIが仕事を変える速度より、組織が「何を仕事として評価するか」を変える速度のほうが遅いなら、しばらくはかなり大きな混乱が起きそうだ。
柴田 淳 - 「みんなのPython」の著者・機械学習講師 retweeted
こういう本は 紙で持ってたほうがいいなって あらためて思いました。
『みんなのPython 第5版』 柴田淳 #ブクログ
booklog.jp/item/1/4815631522


